研究課題/領域番号 |
22510124
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
一木 隆範 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20277362)
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キーワード | 脳計測 / in vivo計測 / バイオデバイス / イメージング / マウス / 2光子顕微鏡 |
研究概要 |
近年、2光子励起顕微鏡(2PLSM)が脳研究の強力な手法として利用されている。当該手法を用いて記憶と神経細胞スパインの形態変化の関連性が示唆される等、神経細胞の精密計測でもたらされる形態学的、分子生物学的知見により、脳機能を理解する新たな時代が到来している。現在、摘出脳を用いた研究(in vitro研究)が世界中で精力的に進められているが、神経細胞機能のより深い理解のため、ありのままの生きたマウス脳(in vivo)の長期・精密計測が必要とされている。しかし、これを可能にするツール・手法の欠落している。そこで、本研究では2PLMSを軸とするin vivo脳研究の技術的制限の大幅な拡張を可能にする、動物個体への埋め込み型インターフェイスデバイスを開発し、世界初の「in vivoマウス脳神経細胞の長期精密計測」の実現を目指す。本年度は、昨年度開発した頭蓋骨埋め込み型マイクロ流体デバイスにおいて時折生じた気泡混入や試薬導入時の脳組織の振動などの課題の解決を目的として、物質透過性と柔軟性、生体適合性を有するハイドロゲルをマイクロ流体デバイスに応用するための要素技術を開発した。具体的にはデバイスの送液系と脳組織をハイドロゲル薄膜構造で分離することで、上記課題を回避する半開放系デバイスを構想し、その試作開発を行った。まず、ハイドロゲルをマイクロ流体デバイスに組み込むために、Tetra-PEGgelとPDMSを精密接合する手法としてハイドロゲルリアクティブマイクロボンディング法(HRMB法)を開発した。本法を用いて、実際にデバイス内の送液系と脳組織をハイドロゲルで分離した半開放系デバイスを作製し、デバイスを埋設したマウス脳組織の神経細胞の観察及び脳組織への試薬投与を達成した。本技術は、従来困難であった生きたマウス脳組織中の神経細胞の長期的観察ならびに脳組織への微量試薬の直接投与を可能にするものであり、脳機能の解明や脳疾患の治療法開発に資する知見を得るための有効な手段を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にマウスに長期埋め込み可能なインターフェイスデバイスが開発され、医学研究用ツールとしての有用性の検討がが進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
動物埋め込み実験を通じてデバイス機能の向上等に努めるとともに、埋め込みデバイス技術の更なる展開の可能性を検討し、埋め込み型マイクロ流体デバイス技術に関する知見の一般化・体系化を行う。
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