本研究では、細胞などの生理的現象の定量評価に影響を与えないように「外場からコントロールが可能な『活性酸素発生源』」を開発し、これを用いて、(1)活性酸素により誘発される酸化ストレスに対する細胞内の抗酸化システムの機能解明、および、(2)細胞間・細胞内シグナル伝達分子としての活性酸素の機能解明に役立つ評価システムを構築することを目的としている。具体的には、インクジェット法にてC_<60>。結晶微粒子をウェル内部に形成した、可視光レーザ照射により生成量の制御が可能な「活性酸素発生源」をもつマイクロアレイチップを試作し、このチップにて細胞の酸化ストレスについて定量的な評価が行えることを実証する。 本年度は、まず、インクジェットにおける各種吐出条件とC_<60>結晶微粒子の析出状態との関係を明らかにし、C_<60>結晶微粒子の比表面積を制御する手法を確立した。そして、インクジェット法にてPDMS上に3次元状に形成したC_<60>結晶微粒子について、活性酸素と反応して蛍光を発する2種類の蛍光試薬(DCF-DAおよびDHE)を利用することで、可視光(532nm半導体グリーンレーザ)照射による蛍光強度を蛍光分光計にて測定し、それぞれ過酸化水素およびスーパーオキシドの生成を確認した。また、インクジェット法の吐出条件を変化させることで得られる、平均寸法×析出密度の異なった数種類のC_<60>。結晶微粒子にて、蛍光分光計で蛍光強度の測定を行い、比表面積の増加により活性酸素の生成量が増加することの確証を得た。さらに、ウェル内に活性酸素を効率良く生成するC_<60>。結晶微粒子を封入したマイクロアレイチップを試作することができた。
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