本研究では、細胞などの生理的現象の定量評価に影響を与えないように「外場からコントロールが可能な『活性酸素発生源』」を開発し、これを用いて、①活性酸素により誘発される酸化ストレスに対する細胞内の抗酸化システムの機能解明、および、②細胞間・細胞内シグナル伝達分子としての活性酸素の機能解明に役立つ評価システムを構築することを目的としている。具体的には、インクジェット法にてC60結晶微粒子をウェル内部に形成した、可視光レーザ照射により生成量の制御が可能な「活性酸素発生源」をもつマイクロアレイチップを試作し、このチップにて細胞の酸化ストレスについて定量的な評価が行えることを実証する。 本年度は、昨年度に試作したC60結晶微粒子をマイクロウェル中に形成させたマイクロアレイチップをベースに、さらに、1つの基板上での細胞培養にて細胞毒性評価が可能なPDMS製マイクロアレイチップを設計・製作した。インクジェットの吐出条件は、最適条件(より微細なC60結晶微粒子が3次元的に形成されており、蛍光分光によりもっとも活性酸素が生成された条件)とした。このチップは、昨年度のグリーンレーザの代わりにLEDライトを使用することにより、C60結晶微粒子が封入された96個のマイクロウェルすべてに光照射をすることができる。また、同チップ上には、比較として、光照射される96個のC60結晶微粒子無しのマイクロウェル、および、C60結晶微粒子が封入され暗室条件とされる96個のマイクロウェルも作り込まれている。本チップにてマウス筋芽細胞(C2C12)の培養評価を行った結果、光照射にて生成したと考えられる活性酸素による細胞毒性が確認され、作製したチップは細胞の酸化ストレス応答性を評価するためのシステムとして使用できることが実証された。
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