研究概要 |
ポリマーに,サブミクロンオーダの微細構造を精密に構築することで,表面の濡れ性や吸着性を制御でき,マイクロ流体デバイスの複雑な流体制御や生体高分子の高感度分析への展開が可能になる。 磁場支援型エッチング装置を用い,アクリル基板を75mol%O_2-CF_4ガスでプラズマ処理したところ,1.5Pa以上の高圧下でナノグラスが形成されることを見出したが,そのメカニズムについて,SEM-EDXにより調査した。0.5Pa以上の圧力下では,ステージ材質であるアルミが検出され,アルミとナノグラスの位置が一致することから,ナノグラスが金属クラスターによるマイクロマスクで形成されることを解明した。また,0.2Pa以下では未処理のアクリル基板に匹敵する平滑加工面が得られたが,この表面にはアルミが検出されず,金属クラスターが高エネルギーイオンにより除去されていることが分かった。 ナノグラスがマイクロマスクに因るものであるという知見から,微粒子をエッチングマスクに用いたナノ構造アレイ形成法を着想した。アクリルとエッチング速さの近いポリスチレンは,円錐アレイ構造の形成に適しており,エッチング速さが大きく異なるシリカにおいては,高アスペクト比円柱構造が容易に加工できることを明らかにした。粒径0.5μmのポリスチレン微粒子を用いた場合,直径300nm,高さ1μm(アスペクト比3.3)の円錐アレイ構造が形成され,直径3μmのシリカ微粒子を用いたとき,直径2.8μm,高さ12μm(アスペクト比4.3)の円柱アレイ構造が得られた。 更に,幅1mm,深さ15μmの直線流路を平滑加工条件で形成したアクリル基板について流路の一部をステンシルマスクにより露出させ,グラスサーフェイスの形成条件でプラズマ処理することにより,直径300nm,高さ3μmのグラスサーフェイスを局所に持つマイクロ流路を形成することが可能になった。
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