本研究は、協力・協調関係によって得られた効果・効用・利得がどのように再配分されるのかという観点に立っている。一般的には、協力・協調関係を結ぶ際、その行為に参加するメンバー・対象全てが自由に、直接コミュニケーションをとれるわけではない。これには、仲介人を通したコミュニケーション、上意下達的な階層伝達、通信、輸送ネットワークなど様々な方法や形態が考えられる。本年度においては、無向グラフによって表わされるコミュニケーション・ネットワーク構造をもったメンバー間の関係において、各メンバーのパワー・貢献度・コスト負担等を測る指標について研究した。通常の協力ゲーム(全てのメンバーが自由に直接コミュニケーションをとることができ、かっ、全てのメンバーが協力・提携関係を結んで行動することができる状況)においては、各メンバーのパワー・貢献度を表わす指標の1つとしてシャープレイ値が提案されている。このシャープレイ値は、 1)各メンバーが他のメンバーの集まり(提携)と提携を結ぶ際の「限界貢献度」のある種の期待値として解釈することができ(マージナルアプローチ)、また、 2)各提携を組むことによって、それより小さい提携では実現成しえなかった「『追加的価値』の均等配分」を全ての提携に渡って累積した値としても解釈できる。(キューミュラティプアプローチ) これらの、2つのアプローチに基づいて、ネットワーク制約下における、2つのメンバーの貢献度・パワーを表わす指標を提案した。ここで、提案されたマージナルアプローチによる指標は、たとえば、鉄道・高速道路網やインターネットなどのようなネットワークインフラを形成する際における、各ノード(駅、ICなど)の、ネットワーク形成に関わるコスト負担の割合を表現するのに適していることがわかった。また、キューミュラティプアプローチによる指標は、ネットワークを維持するための重要度を表現するのに適していることがわかった。
|