研究課題
近年、認可保育所の待機児童が都市部を中心に爆発的に増加しており、保育所の「質」と「量」の充実が喫緊の政策課題となっている。今年度はまず、既往研究の収集とレビュー、およびデータの収集と加工を行った。対象地域は、保育所待機児童の増加が著しく、全国の待機児童数の約半数を占める東京都の23区とした。次に、地理情報システム(GIS)と詳細な空間情報を活用して、一定の質を備えた保育所(認可保育所、東京都認証保育所、認定こども園)の利用可能性の現状を分析した。さらに、John Kainの「空間ミスマッチ」(spatial mismatch)理論を保育所に適用し、「保育所の空間ミスマッチ」を分析した。具体的には、「保育所の空間ミスマッチ」を、保育所にアクセスできないことにより仕事と子育ての両立が困難になる状況として捉え、(1)保育所アクセシビリティは仕事と子育ての両立において重要かどうか、(2)保育所需給の地理的ミスマッチが生じているかどうか、の2つの問いを分析した。(1)については、2009年に実施した保育所アクセシビリティと仕事と子育ての両立に関するアンケート調査のデータを用いて分析した。(2)については、保育所需給の地理的ミスマッチを表す保育所アクセシビリティを、児童の年齢、および国勢調査の基本単位区ごとに計算し、分析した。その結果は、東京23区で保育所の空間ミスマッチが生じていることを示していた。保育所の空間ミスマッチの解消は、今後の保育政策において1つの重要なアプローチになることを提案した。
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Center for Spatial Information Science, The University of Tokyo, Discussion Paper
巻: 107 ページ: 1-30
応用地域学研究
巻: 15 ページ: 1-12