研究概要 |
本研究の目的は,通信ネットワークの性能評価のために,到着間隔やサービス時間に相関のある一般的な待ち行列モデルの解析を行うことでした.また,これと並行して,複雑なネットワークの性能評価に関する研究も進める計画を立てていました.待ち行列の解析においては,定常待ち時間分布等の性能評価尺度を陽な形で導出することは一般に困難なため,そうした定常分布の裾の漸近的な性質を調べることにしていました.当該年度は,その第一段階として,マルコフ再生過程における極限定理を一般の定常点過程の枠組に一般化することを挙げていましたが,これは当初予想していなかった条件が付いたものの一応は達成され,その結果を国内の学会で発表しました.複雑なネットワークの性能評価については,その一つとして,ブーリアンモデルと呼ばれる確率幾何モデルによって構成されるランダムグラフに対して,その次数分布の漸近的な性質を調べました.この研究では,ユークリッド空間のランダムな位置にランダムな大きさの球を置いたときに,2つの球が重なればその中心間に枝を引くことによってできるランダムグラフを考え,球の半径が裾の長い分布を持つならば,グラフの次数分布も裾の長い分布に従うことを示しました.これは,例えばアドホック・ネットワークなどにおける無線ノード間の接続性に関連するものです.この研究成果は国際会議で発表しました.さらに,情報システムにおけるキャッシュアルゴリズムに関する研究も行い,その成果も国際会議で発表しました.
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