本研究の目的は,通信ネットワークの性能評価のために,到着間隔やサービス時間に相関のある一般的な待ち行列モデルの解析を行うことであり,それと並行して,複雑なネットワークの性能評価への応用も進めることでした.そして前年度からは,待ち行列への客の到着過程を表す際には1次元であった点過程を空間点過程に置き換え,それが無線通信ネットワークの無線ノードの位置を表すものとした確率幾何モデルの解析に取り組んでいました.この分野でも従来はポワソン点過程を用いた研究が主流でしたが,これは各無線ノードが互いに独立に配置されていることを意味しています.そこで,ジニブル点過程と呼ばれる点同士が互いに反発しあう点過程を用いてセルラネットワークの無線基地局の位置を表したモデルを考え,その解析を通して性能評価を行いました.特に,強い信号電力で広範囲をカバーする基地局や信号電力が弱くて狭い範囲しかカバーできない基地局が混在するなど,複数種類の基地局のあるセルラネットワークをαジニブル点過程と呼ばれる点過程を用いてモデル化し,その性能評価を行いました.また,基地局からユーザへの信号を考慮した下りリンクのモデルだけではなく,ユーザから基地局への信号を考慮した上りリンクのモデルも考えました.これらの結果は,いずれも国内の研究会で発表しています. 一方で,いずれも前年度,あるいは前々年度から取り組んでいた複雑ネットワーク上の効率的な情報伝搬に関する研究や,計算機システムにおけるキャッシュアルゴリズムの性能評価に関する研究についても,その成果を海外の論文誌に発表しています.
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