研究課題/領域番号 |
22510143
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮崎 浩一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10334575)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 金融経済学 |
研究概要 |
平成24年度は、主に次の研究成果が得られた。 (1) 流動性リスクを捉える指標にビッド・アスク・スプレッドがある。Hasbrouchモデルを用いて、株価ダイナミックスにおいてビッド・アスク・スプレッドをモデル化し、株価時系列データから推定した。推定値は、現実のビッド・アスク・スプレッドに概して近く、日本株式市場の流動性リスクを推定する際に、同モデルの有用性が確かめられた。(2) (1)で推定した、株式の流動性リスクを説明変数の1つとして用い、景気指標の予測回帰を試みた。他の有力な説明変数をコントロールしても、流動性リスクには何らかの景気予測力が内在すること、流動性リスクプレミアムの変動が景気変動に先行することがわかった。(3) 将来の投資機会の変動を表すリスクファクターが、クロスセクショナルな株式リスクプレミアムを説明する際に有力なリスクファクターとなることを、リジームスイッチングモデルを用いて、明らかにした。(4) 短期・中長期におけるインフレーションの変動が、債券の信用リスクプレミアムや、株価から推定されるディフォールトリスクプレミアムが債券や株式の価格変動に先行して変動する可能性があることが示唆された。(5) 個別銘柄のリスクには、ジャンプ成分が多分に含まれている。ポートフォリオで保有すると、ジャンプ成分がネットオフされ、リスクは拡散成分のみに近づくことが予想されるが、金融危機時にはジャンプ成分の相関が高く、ポートフォリオでもジャンプリスクプレミアムが内在することがわかった。 上記の成果は、流動性リスク、投資機会が変動するリスク、インフレーションリスク、ジャンプリスクやこれらのリスクファクターによるリスクプレミアムの変動を計量し、的確に把握することによって、資産評価やリスク管理へ役立てる道筋を提示したという点で意義のある重要な研究成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
株式の流動性リスクを株価のダイナミックスのみを用いて推定することができた((1)の成果)ことに加え、それが景気指標に対し、予測力を持つことがわかった((2)の成果)。資産評価において、将来の投資機会の変動がもたらすリスクプレミアムの重要性を確認できた((3)の成果)。インフレーションリスクの債券・株式に内在する信用リスクプレミアムに対する先行性を確信できた((4)の成果)。ポートフォリオにおけるジャンプ成分のリスクを計量することができた((5)の成果)。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、これまでに得られた一連の研究成果を総合的に取りまとめて、そこから得られるインプリケーションについて検討する。また、研究成果の中で特に重要と考えられる部分(流動性リスク、ジャンプリスク)については、更に研究を深めていくものとする。
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