研究概要 |
多くの資産価格理論では一物一価を仮定するので,価格付け汎関数は線形となるが,流動性に乏しい非完備市場の場合では,現実の価格付けは最早線形性を保っていない.そこで,本研究では,リスク尺度による評価方法を踏襲して,原資産の流動性に関する制約や原資産間の相互依存性を考慮しながら個別資産の評価を再構築することを目的とする.一般的に曖昧さ回避による無差別価格はそのような非線形価格の性質を持っている. 前年度に引き続き,回避したい曖昧さの源泉としてレジームスイッチによる不確実性を考察した.主観的割引率は一定と仮定する既存研究が多いが,主観的割引率自体も確率的に変動しうる.また,その確率的な変動も景気動向やイベントなどによって突発的に変化しうる.これらのことを勘案して主観的確率がレジームスイッチする金利モデルに従うと仮定して,そのレジームスイッチリスクの曖昧さを回避するモデルを検討した.その最初の段階として短期金利が,複数の金利モデル間でレジームスイッチする場合の債券価格やデリバティブ価格を検討し,その価格の導出に成功した.金利の変動過程がレジームスイッチする場合に加えて,金利の水準とともにモデルがレジームスイッチする場合でも対応できる.導出には,Feyman-Kac公式とhomotopy perturbation methodを応用した. この方法により,前述の設定においても効用最大化問題や証券価格の無差別価格を導出することは可能であると期待できる.
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