研究概要 |
本研究の目的は、看護師一人一人が家庭環境に配慮しながら無理なく働くことができ、かつ患者に質の高い看護を常時提供できる良好な看護師勤務表を自動作成するためのシステムを構築することである。 平成22年度は、(1)種々の制約条件を考慮して次月以降の月間勤務表を作成する静的スケジューリング法の性能評価,ならびに(2)欠勤発生時の勤務割当変更のための動的スケジューリング法の改善に取り組んだ。 (1) については、平成19~21年度科学研究費補助金(基盤研究(C))「急な勤務変更への対応を考慮したナース・スケジューリングシステム」で開発したヒューリスティック解法の性能を,最適化ソルバーによって等価な数理計画問題を解いた結果との比較により検証した。具体的には、まず、ナース・スケジューリング問題を辞書式最小化目的関数をもつ目標計画問題として定式化した。これを最適化ソルバーCPLEX12.2を使って解き、得られた勤務表とヒューリスティック解法で得られた勤務表を比較した。その結果、いずれの方法でも絶対制約条件をすべて満たした実行可能な勤務表が得られたが、目標制約条件違反の程度は最適化ソルバーによる勤務表のほうが全体に小さく、ヒューリスティック解法には解の質に関して改善の余地があることが判明した。一方、計算時間に関しては、ヒューリスティック解法が約5秒であったのに対し、同一計算環境の下で最適化ソルバーでは5~8時間であった。 (2) については、複数日の連続欠勤への拡大適用を念頭において、1日限りの欠勤への対応策として提案した再帰的アルゴリズムを、その勤務割当変更過程を探索木に記憶し,分枝限定法と同様の考え方でより良い勤務割当変更案を探索できるように改善した。最大再帰レベルを5に制限したこのアルゴリズムによれば、計算時間を大幅に増加させることなく勤務割当変更件数がより少ない実行可能な勤務表を作成できた。
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