研究課題/領域番号 |
22510158
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
山崎 和子 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (70265510)
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研究分担者 |
櫻井 尚子 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (50196127)
吉澤 康介 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (50296216)
藤原 丈史 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (60348456)
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キーワード | 炭素排出権取引 / 投機市場 / バブル / リスク管理 / エネルギー市場 |
研究概要 |
排出権取引価格は、電力の価格、化石エネルギーの価格、景気、天候などから影響をうけている。本研究では、蓄積された取引データを分析することで、それらの要因間の相関構造を明らかにする。次に、影響の方向性を時間遅れのある相関構造を抽出することよって、この急成長をしている新しい市場に世界の投機資金が流入し、バブルが形成されることを監視し、この市場を利用して様々なヘッジを行っている各事業会社が安全にそれを行なう方法を提供することを目的とする。 23年度、前述した目的のうち要因間の相関構造を明らかにする研究を以下のように行った。各時系列の時間遅れのある相関の絶対値を計算し、各時間遅れの中で最大値を相関の強さとした。それより距離を定義して最小全域木を求めた。このような最小全域木を応用した方法を用いてこれらの要因間の相関構造を方向を持つネットワークとして表した。また、排出権価格時系列との時間遅れの大きさを調べた。その結果、安定して、株価から原油は約30日、排出権取引価格は約90日の時間遅れがあることを発見した。この成果はProc.Of 17^<th> AROBに掲載、QUANTITATIVE FINANCEに投稿中である。この結果は、排出権価格のリスク管理に大きな意味があると思われ、今年度以降、具体的なリスク管理の研究を推進する予定である。 また、リーマンショック後、世界経済の停滞とともに排出権価格が下落し、日本においては、震災後、火力発電による発電を余儀なくされたことから、一般にCO2排出抑制に対する関心や意気込みが後退したように思われる。このような時こそ継続的に努力をする必要があるという認識のもとに、アジア各国において、産業区分ごとのCO2排出量がどのように影響しあっているかネットワーク構造を明らかにし、どの国のどの産業における排出量の削減が有効であるかコストパーフォーマンスが良いか研究をおこなっている。この成果はProc.Of 17^<th> AROBに掲載、PRESCO2012に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで、ほぼ50%の達成度である。排出権取引は新しい市場であること、および、各国の政策や市場ルール、国際会議の結果によってデータが影響をうけ、成熟した市場である株式や商品のデータより学術的な取り扱いが予想以上に困難であったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度が最終年度であるので、研究を24年度中に終了するように更なる努力をして、現状の分析や発見だけでなく少なくともリスク管理について論文を投稿するところまでは達成したい。それと共に、その成果が採択されるのは、25年度以降になることもやむを得ないと認識している。
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