研究概要 |
本研究は,多峰性の目的関数や厳しい制約領域を有する最適化問題,関数(特に目的関数)の計算費用が高い最適化問題に対して,近傍構造と近似モデルを利用した効率的かつ汎用的な最適化手法を検討することを目的としている.本年度は上記のような最適化問題を対象に差分進化(DE)を用いた以下の研究を行った.(1)変数間に強い依存性がある問題に対してDEの探索性能が低下する問題点を解決するために,回転不変性を有する局所標本操作(Local Sampling Operation,LSO)を提案した.LSOでは,親と異なる複数の探索点を選択し,親を中心としこれらの点により張られた局所領域から1点を子として選択する.LSOの成功率を用いてDEの通常の交叉操作とLSOを確率的に採用するとともに,局所探索と大域探索の切換を行った。13個のテスト問題により関数評価回数を大きく削減できることを示した.(2)ファジィクラスタリングによる分割エントロピーを用いた探索点の分布推定法を提案した.エントロピーが非常に高ければ探索点が一様に分布し無作為探索,低ければ偏って分布し方向探索を行うパラメータ制御をした.また,基本ベクトルの選択方法として貧欲戦略であるspecies-best戦略を提案した.13個のテスト問題により標準DEに比べて関数評価回数を削減できることを示した.(3)各探索点の集団内のランク情報を用いて,探索点毎にパラメータFとCRを制御する固定的パラメータ設定法を提案し,εDEに適用した.比較的簡単な,3個のテスト問題により他手法に比べて関数評価回数を大きく削減できることを示した.(4)(2)のspecies-best戦略を用いたDE(SDE)において,種分化で用いる近傍構造によるSDEの性能比較を行った.k-平均法,k-近傍法,k-無作為法による近傍を用いた。13個のテスト問題による比較実験の結果,SDEにおいてはk-近傍法とk-無作為法がk-平均法より優れていることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変数間に強い依存関係がある問題に対して,回転不変性を有する子個体生成法,分割エントロピーによる分布推定法,種分化を用いたspecies-best戦略の提案などを行った.テスト問題による比較実験によって,これらの提案が,探索性能の向上および関数評価回数の削減に効果があること示し,有効性を確認している. また,探索点のランク情報を用いて探索点毎にパラメータ値を設定するパラメータ設定法を提案し,これにより解の収束性向上と集団の多様性維持を目指す研究を開始している.
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今後の研究の推進方策 |
目的関数の景観が単峰性・多峰性のいずれであるかを判定する手法の検討を進める.また,高次元の探索空間を持つ問題に対して,多点探索法による効率的な探索方法の検討を進める.これらの検討結果を踏まえ,DE,ε_DE等の集団的降下法に適用し,制約なし,制約付き最適化のテスト問題を用いて性能評価を行う.
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