研究概要 |
本研究の目的は,爆発や衝突等の偶発作用による鋼構造物の進行性崩壊を防ぐための強靱性を有する鋼構造物の設計法を確立するための基礎データの収集を行うことである。具体的には,柱材の消失による瞬間的な沈下現象を,衝撃的な外力入力に置き換え,衝撃力を受ける場合の鋼骨組の動的挙動に関して実験的および解析的側面から検討するものである。本研究を達成するために,本年度は有限要素法を用いた弾塑性衝撃応答解析を中心に研究を実施し,実験結果との比較により解析手法の妥当性を検討した。数値解析モデルは対称性を考慮して1/2モデルとし,要素はすべて8節点個体要素を使用した。また,実験試験体を忠実にモデル化するために,プレート材あるいはアングル材と柱フランジ間および高力ボルト間などに接触面を定義するとともに,高力ボルトには初期張力を導入した。なお,実験では同一試験体に対して初期衝突速度および増分速度を1m/sとした漸増繰り返し載荷条件で実施しているが,数値解析では計算時間の都合上,すべて単一載荷状態で実施した。数値解析結果より,(1)重錘衝撃力における衝突初期の第1波は実験結果と比較して過小評価するものの,波形性状に関しては実験結果を大略再現可能であること,(2)また,最大変位に関しては,実験結果とほぼ対応していること,(3)接合部形式の差異が,最大衝撃力に与える影響は小さいこと,および(4)これらの結果より,提案の数値解析手法を用いることによって大略実験結果を再現できること等を明らかにしている。しかしながら,この解析では鋼材のひずみ速度効果や繰り返し載荷による塑性効果の影響を考慮していない。次年度はこれらの影響についても数値解析に反映させた検討を行い,精度の向上を図るとともに最終目的である多層多径間骨組の進行性崩壊挙動解析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
衝撃荷重を受ける鋼骨組の耐衝撃挙動に関して,数値解析によって実験結果を精度よく再現するためには,鋼材のひずみ速度効果の影響について確認を行う必要がある。鋼材のひずみ速度に関しては部材レベルでの検討は少ないものの,要素レベルでは数多く実施されている。既往の研究成果を数値解析に反映させることより,実験結果をさらに精度よく再現できるか否かの確認を行う。また,その結果を踏まえ多層多経間骨組の進行性崩壊解析を行う。
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