研究課題/領域番号 |
22510172
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
糸井川 栄一 筑波大学, システム情報系, 教授 (80334027)
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キーワード | 地震火災 / 市街地火災 / 消防力運用 / 広域避難 / 人的被害 |
研究概要 |
東日本大震災においては、地震津波に起因する沿岸地域での市街地火災が発生したが、これに対応する消防隊、消防団等は津波ならびに津波被害による活動困難や安全の確保に大きな課題が見られた。 本研究課題では、津波を想定しない大都市域における地震時の市街地火災を念頭に、消防活動による人的被害の軽減効果を定量的に推計し、より効果的な消防活動戦略を検討するものであったが、東日本大震災の発生を受けて、津波の襲来を前提とした戦略的な消防活動について調査・研究することが喫緊の課題であると判断し、本年度は、地震津波に起因する沿岸地域の市街地火災を対象とした、火災拡大状況、消防活動状況、活動困難要因について、被災地の消防隊・消防団・住民に対するヒアリング調査、アンケート調査を行うことが極めて重要と判断し、重点的にヒアリング調査、アンケート調査を行い、非常に多くのデータを得ることができた。 現段階で上記の調査を分析した結果については、後述の「13.研究発表」で示した論文に記載の通りである。 被災地によっては、僅かな標高差によって辛うじて津波の被害を免れ、津波後の火災に対応することができているにもかかわらず、火災は複数地点から出火し、大規模な火災へと進展したところが見受けられ、同時多発火災に対する対応困難性が指摘できた。また、津波後に火災が発生した場合、応援隊がなかなか来られないため少数の隊員や団員で対応を求められるが、火災現場に瓦礫等の障害があって近づくことができない、津波の再来襲危険があり、安全な場所から遠く離れて活動することができない、消火栓が使えないため消防水利が不足するなどの理由から、延焼防止活動を行うことが精一杯である状況が明らかになった。 一方で、リアス式海岸の市街地に見られるように、山や丘、高台などの麓に住宅等が押し流され、その場所で火災が発生し、大規模火災に至る事例が数多くあることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東日本大震災の発生を受けて、消防運用による人的被害軽減効果の数量的推計を行うことに代えて、地震津波に起因する沿岸地域の市街地火災を対象とした、火災拡大状況、消防活動状況、活動困難要因について、被災地の消防隊・消防団・住民に対するヒアリング調査、アンケート調査を行うことが極めて重要と判断し、重点的にヒアリング調査、アンケート調査を行い、非常に多くのデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度のヒアリング調査・アンケート調査に加えて、さらに対象地域を拡大し、地震津波に起因する沿岸地域の市街地火災を対象として火災拡大状況、消防活動状況、活動困難要因について調査を行い、これら入手したデータを体系的に分析し、地震津波後に発生した火災の延焼拡大のプロセスを明らかにするとともに、地震火災と異なる津波火災に特有の活動困難について、困難要因を構造化することにより明らかにする。
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