爆発に伴って発生する種々の飛散物は,同時に生じる爆風や放射熱と同様,周囲の人や構造物に大きな被害をもたらす可能性があり,爆発事故の影響評価において極めて重要な因子となる.しかし,その発生機構や飛散特性に対する理解は不十分であり,定量的影響評価に利用できる水準には達していない.本研究では,爆発事故の影響評価の精度向上に資するため,爆発に伴う飛散物の発生・変形(固体力学)とその飛散(流体力学)とを連成解析するためのマルチフィジックス統合数値シミュレーションコードの開発を行うことを目的としている.平成25年度は以下の研究を行った. ・粒子法シミュレーションの数値的不安定性に関する研究:衝撃荷重を受けた弾性体の変形シミュレーションにおいて,ある条件下で数値的な振動が発生し,最終的に発散に至る現象が起こった.そのため,まず,より安定な数値積分法を導入したが,その効果は限定的であった.次に,人工粘性を付加することで安定化を図ったところ,数値的振動を取り除くことができ,発散を防ぐことに成功した. ・解適合格子法の実装:これまで開発してきた直交格子上における流体シミュレーションコードに解適合格子法を実装し,衝撃波等の不連続面近傍の解像度を改善することに成功した. ・流体シミュレーションにおける移動境界の取扱いの検証:流体力を受けて変形する弾性体の境界を流体シミュレーションで取り扱う方法としてカットセル法を導入しているが,その精度を検証するため,1自由度系を対象とした連成シミュレーションを行った. 年度内に得られた成果は,第29回宇宙技術と科学に関する国際会議(2013年6月・名古屋国際会議場),第29回国際衝撃波シンポジウム(2013年7月・Univ. of Wisconsin-Madison),日本機械学会北陸信越支部第51期総会・講演会(2014年3月・富山県立大学)において発表した.
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