高齢者世帯における居住者の生活状況の定量化のため、加速度センサーを用いた振動波形解析を行い、定常状態を定量的し、測定値の逸脱が観察された場合を異常値と見なして、遠隔に居住する家族等へ伝達する手法について検討した。当該年度はまず質問紙調査を通じて、居住者の生活状況を遠隔に居住する家族へ伝達する場合に求められる情報の種類と、家族構成との関連性について研究を行った。また検討会において、居住者自身の屋内移動における振動の測定と分析の必要性が外部より指摘されたことから、知見上特に身体機能が顕著に表れる頭頂点の振動波形の測定を行い、高齢者と若年者との間の比較を行った。 中山間地域が多く存在する長野県長野市周辺に居住する若年者(平均年齢19.4歳±1.0)の家族構成の多くは父母と同居するが、祖父母との同居については、父方の祖父母の方が母方の祖父母よりも同居の割合が高い。祖父母(平均年齢76.2歳±5.5)との交流頻度には個人差が大きいが、1か月に1回程度の回答が最頻値を示した。主な関心事は同居と別居にかかわらず健康と安全に係る項目であり、情報提供のニーズが高いことが示された。インターネットを介して情報提供する際の端末は常時使用できることが望ましく、保有率が高いノート型PC(77.6%)およびスマートフォン(77.6%)の使用が効果的であると考えられる。またアプリケーションではtwitterの利用率が高い(63.8%)ことから、SNSとの連携を可能にすることで、常時モニタリングが可能な環境が整うことが示唆されたと考えられる。 一方、屋内における高齢者の挙動は、若年者よりも前後の動きが大きいことが分かった。特に階段での挙動が大きく、本研究の対象とした建具だけでなく、階段等の転倒危険性が高い箇所へのセンサー設置により、家庭内事故の発生に対する効果的な初期対応が可能になることがわかった。
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