研究課題/領域番号 |
22510187
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
中村 洋一 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (10114167)
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キーワード | 自然災害 / 火山噴火 / 火山災害 / 火山防災 / リスク評価 / ハザードマップ |
研究概要 |
活火山地域での効果的な防災対策のために、本年度はわが国の活火山の過去の全噴火記録とその被災状況を収集し、噴火経過、災害要因、被災規模などを集計した。わが国で過去約2000年間の記録に残った噴火は1,135回で、犠牲者数は約2,100人であった。九州で噴火活動数が最も多く、次いで関東・中部と伊豆・小笠原が多かった。犠牲者数は関東・中部が最も多くて約1400名であった。噴火数を規模でみると、VEI2で最も多く、VEI3以上はVEIが大きいほど減少する傾向があった。過去約500年間ではVEIが小さいほど噴火数が多いが、約2000年間でVEI4と5の噴火数が多くなっている期間はなかった。VEIが大きい噴火数は火山ランクが高いほど多くなる傾向が認められた。災害要因は火山泥流と降下火砕物による被害が特に多い。噴火活動による津波は事例が少ないが、発生すると大規模災害となっている。 具体的事例としては那須岳火山の噴火活動史を整理し、噴火記録と災害事例から災害要因を整理した。地域基礎情報をGISによって整理して、噴火災害のリスク評価手法を検討した。那須岳地域では地域住民(2.8万人)よりはるかに多い観光客が訪れ(5-10月の観光客数は月間50万人強)、宿泊施設は火口20km以内に最も多く分布している。避難施設数と規模は住民向け収容がほぼ限度で、火口20km以内に分布が多い。したがって、多数の非定住者がいる活火山近傍地域での火山防災体制は、ハード的対策(防災施設や避難施設などの充実)に加えてソフト的対策(リスク評価、噴火イベントツリーとシナリオ、地域防災計画による避難のあり方などの検討)が重要となる。こうした防災体制の見直し作業は防災協議会や防災委員会などで現在すすめられている。本年度の研究成果は、学会や防災シンポジウムなどで公表するとともに、地域防災活動を関係委員として支援した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の本年度分に予定したように、(1)火山ハザードマップについては、更新されて活火山地域について関係資料を収集整理し、(2)那須岳火山地域についての自然環境、社会環境、基盤インフラ情報の更新を昨年度に続いてすすめてGISディジタル情報データベースとした。(3)これらの収集した火山防災関係資料と諸外国での収集資料と比較検討して、火山災害リスク評価やリスクマップ作成のための準備をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に収集整理しつつある火山地域の火山防災関係資料のGISディジタル情報を充実更新していく。また、火山地域の火山リスク評価の手法を先進的諸外国の方法を検討して、活火山の火口周辺地域まで生活空間として利活用しているわが国での火山周辺自治体での火山災害リスク評価の手法を検討する。また、火山災害リスク要因となる火山活動の諸現象を、わが国の活火山の過去約2000年間の噴火活動と噴火災害履歴のデータベースと、活火山ごとの災害規模と災害要因とを関連させて、客観的で定量的な災害リスク評価の確率的手法の開発をすすめる。これらを用いて火山周辺地域のもつ自然環境、社会環境、基盤インフラ情報のGISディジタル情報から、火山地域の火山災害リスク評価とリスクマップの作成をすすめる。あわせて、日本火山学会の火山防災委員会(申請者が防災担当理事で世話人)、さらに火山地域での公開シンポジウムなどで意見交換をすることで、より実践的な成果が得られるようにすすめていく。
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