本研究は土石流の挙動を模擬し、危険区域を予測するモデルの開発の基礎となるものである。土石流のような自由界面を含む固液混相流の流動解析を行うため、固体粒子運動を離散要素法(DEM : Discrete Element Method)、液体運動をMPS(Moving Particle Semi-implicit)法で計算する、DEM-MPS手法による数値計算コードの開発を試みた。まず、液中での単一粒子沈降挙動に関する数値解析を行った。これは、本モデルにおける固液両相間相互作用力の影響領域を決定するためである。その結果、MPS粒子径の4倍程度の影響領域を設定しておけば、十分な精度で計算を行うことができることを確認した。つぎに、本手法の妥当性を検証するため、本手法を液中での粒子群崩壊挙動に適用した。さらに、同条件の実験装置を作成し、粒子群の挙動をビデオカメラで撮影し、計算と実験とで比較を行った。崩壊する粒子群の先端位置の時間変化について、計算結果と実験結果を比較したところ、定量的に良い一致を示すことを確認した。以上の結果から、本研究で開発したDEM-MPS手法が固液混相流に適用可能であることを確認できた。このことは本手法を土石流の挙動解析に適用できる可能性を示唆するものである。ただし、現段階では限られた条件に対してのみ検証が行われただけであり、十分な検証とはなっていない。今後、さらに詳細かつ慎重に計算と実験の比較を行う必要がある。
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