地震の被災地では地震後、数度から数十度傾いたまま立っている木造住宅が、しばしば見受けられる。傾いた建物は解体されることが多いが、傾きをもどして使用することが可能な場合が多々あると思われる。本研究は実験と計算により地震で傾いた木造住宅について、これを解体するか否か、傾きをもどし補強せず、または補強して使用をつづけるかといった判断を下せるようにするためのものである。 実験に用いた試験体は在来軸組工法で4本の柱を使用したものである。耐震抵抗要素としてはすじかいを用いた。試験体の仕様は2種類で一つはフラット35の融資基準に対応して強い板状の金物を用いたものと、もう一つは40年ほど前に建てられた建物に近い仕様の貧弱な金物を用いたものである。前者は「既存適格」後者は「既存不適格」をイメージしている。 実験はまず、試験体に地震を想定した加力により10度程度の傾きを生じさせた。その後、傾きをほぼゼロにもどし、損傷したすじかいの代わりに、新たにすじかいを取り付け、再度、地震を想定した加力を行った。この後半の加力前の補修では、どちらの種類の試験体でも「既存適格」の仕様とした。これは、実際に現在地震が起こった場合の補修としては、金物の流通状況から考えて「既存適格」仕様とするのが自然だと考えたからである。 その結果、補修の効果が認められた。ただし、「既存適格」の初回(初被災想定)加力時の性能には多少及ばない性能となった。
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