地震の被災地では地震後、数度から数十度傾いたまま立っている木造住宅が、しばしば見受けられる。傾いた建物は解体されることが多いが、傾きをもどして使用することが可能な場合が、多々あると思われる。本研究は地震で傾いた木造住宅について、これを解体するか否か、傾きをもどし補強せず、または補強して使用をつづけるかといった問題に関して有用な情報を実験と計算によって得ようとするものである。 本年度は、ある方角方向に働いた地震動により受けた損傷が、別の方角方向への抵抗性能に及ぼす影響について検討した。試験体は在来軸組工法で4本の柱を使用したものである。耐震抵抗要素を軸組のほかにもっていないもの(純フレーム)と、構造用合板により軸組内を強くしているものの2種類用意し、性能を調べた。仕様はフラット35の融資基準に準拠したものとした。加力は一度の震災をイメージして破壊に至らしめたものと、震災後に復旧を行い、その復旧の効果を調べたもの、また、震災前の状態にくらべて手厚く補強して、その補強効果を調べるために破壊に至らしめたものなど、種々のパターンで実験を行い、結果を比較した。 その結果、補強や補修を施したものには、その施工の効果が認められた。ただし、ねばりなどの面で、震災の経験のないものとくらべると多少劣ることがあることが分かった。
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