研究課題/領域番号 |
22510197
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
清水 收 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20178966)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 豪雨 / 土砂災害 / 土砂流出 / 土砂管理 / 縦横断測量 / 河床上昇 / 河床低下 / 土砂滞留時間 |
研究概要 |
定期的(毎年9月)に行う河床変動モニタリング計測は,堰堤建設中のためパラダイ試験流域では実施できず,ルベシュベナイ試験流域のみ実施した。この調査結果を含む2003年以降10年間分の河床変動データを用いて分析を行い,以下のような成果を得た。 1.両流域共に,2003年と2006年の2回の大雨イベント(雨量記録において前者が1位,後者が2位)で河床に大規模な土砂堆積が発生し,その他の年には堆積土砂の洗掘が続いている。これは土砂の過剰堆積という不安定になった流路が,土砂の洗掘・減少を通じて,元の安定な状態に回復していく過程と考えられる。この流路安定化プロセスを認識するには,滞留土砂量の時系列的な減少によるだけでなく,河床形状の時間的な変化からも可能である。 2.堆積により上昇した河床高は洗掘に伴い低下することから,河床低下の進み方が流路安定化を示す。河床高として横断測線の最深部(澪筋)の標高を採り河床低下を調べた結果,河床高が上昇前の高さに戻って安定することが確かめられた。これを典型例と考えて,他の河床低下パターン(上昇前と異なる高さで安定,10年後も低下が継続)をも見いだし,最低河床高変化からみた流路安定化の評価を行った。 3.次に,河床横断形状の変化からみた流路安定化を検討した。多くの測線で,土砂による埋積で起伏の少ない平坦に近い横断形となり,その後の洗掘によって小流路が掘り込まれ,その断面が拡大していく,という経過であった。最低河床高が安定に達した頃の横断形状は,谷幅25~30mの河床中に幅10~15m,深さ1m強の掘り込み流路が形成されていた。したがって,こうした断面サイズの流路形成が安定化の一要素とみられ,この断面サイズは平年における年最大流量に関係すると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の到達目標として,「土砂動態を説明するモデルとして,土砂移動場ならびに滞留土砂の状況と豪雨との相互作用を説明すること」を挙げている。ここのキーワードは,土砂移動場,滞留土砂,豪雨の3つである。豪雨時には,大量土砂生産が生じて河床が土砂で満たされた状況が出現する,との理解でよい。そこで,豪雨後すなわち土砂過剰状態からの土砂動態に焦点を当てることにしてきた。流路回復の過程を,滞留土砂量の時系列的な減少から把握することに加え,今年度は土砂移動場の変化,すなわち河床形状の時間的な変化から認識することができた 以上の理由から,おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
土砂過剰状態からの土砂動態および流路安定化プロセスについて,特徴はおおよそ整理できているので,今後はそれらを理論的に説明することを目指す。
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