2つの試験流域における10年間分の河床変動計測結果より,2003年と2006年の2回の豪雨による大規模土砂堆積とその後の流路の土砂洗掘過程を分析した。 1.滞留土砂量の推移:両流域ともにかつて土砂洗掘が活発であったが,最後の4年間ならびに2年間は大幅に洗掘が鈍化した。最終的な滞留土砂量は,2006年イベントの前年の量に近い。このことは,区間全体で見た時2006年イベントによる土砂増加分が洗掘によって解消されることで,洗掘が鈍化し流路が安定化したと解釈できる。 2.河床変動の推移:測線ごとの河床変動の推移を河床高低下,河床横断形変化,河床材料粗粒化から検討した。2006年イベントで上昇した河床高は,その後低下する。上流区間では速やかに低下し4~5年後に止まったが,中流区間では現在まで緩やかに低下が継続している。横断形変化は,上流区間では平坦河床から溝状の流路が掘り込まれ,4~5年後に変化が止まったが,中流区間では変化が継続している。河床材料はイベント以降に粗粒化していき,上流区間では3~4年で完了したが,中流区間では近年まで継続している。これより河床低下,横断形変化,粗粒化は同時進行することが分る。区間による違いについて,上流では変化が速やかに進んで早く止まり,中流では穏やかに変化が続いているのは,初期の堆積規模(初期の不安定さの度合い)の差異および勾配(不安定を解消する洗掘の力)の違いが反映されたと推察される。 3.河床変動停止の条件:河床変動の停止した横断測線は,洗掘による溝状流路が一定の断面規模を持つという特徴があった。それを洪水流下能力から評価したところ,2006年以降の推定最大流量を断面の8割水深で流せる断面規模であることが分った。一方で,洗掘が継続中の測線は未だその規模を満たしていないので,洗掘が進行して流下能力を獲得すると,洗掘が停止すると推察される。
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