研究概要 |
本年度は,地震時における河川堤防の機能維持と堤防の強化が図れる対策工法としてコニカルマットを選定し,その基本的な特性に関する実験と実際の施工を念頭に置いたフィージビリティスタディを行った。 当該工法の基本的な力学特性はすでに公開されているので,まずは,河川堤防に対する適用性,実施工時の可搬性,施工性について検討を行った。小型模型振動実験では,河川堤防の模型に対して,当該マットを模した対策を施し,対策と無対策の比較による沈下抑制効果と堤防天端における不陸の発生について実験的に,そのクライテリアを求めた。結果,通常のレベル1相当の地震動では,模型堤体は全く健全で,レベル2相当の地震力になると,基礎地盤の液状化によって堤防全体は沈下するものの,堤防として形状と機能は維持できることが確認され,本対策の合理性を実証した。 一方で,小型模型では寸法効果の影響を受け,拘束圧の低さから実際の堤防での適用性を完全に証明するものではないため,定量的な評価としては不十分である。 そこで,大型模型振動実験では,実大の1/5モデルの堤防を作製し,大型振動台による加振実験を行った結果,マット補強した堤防では,クラックの発生や法面の小崩壊も見られず,その後のレーダー探査による内部チェックでも堤体としての機能が維持されていることが確認された。 加えて,本年度は提案する対策工法の適用範囲を決めるため,過去の地震において被害を受けた河川堤防に関する基礎的データの収集と,表面波探査を用いた堤体の強度とレーダー探査結果との整合性を確認することも行った。
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