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2011 年度 実績報告書

豪雨前兆観測システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22510200
研究機関気象庁気象研究所

研究代表者

足立 アホロ  気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (80354520)

研究分担者 小林 隆久  気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 部長 (40343892)
増田 一彦  気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 室長 (90354513)
山内 洋  気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (00354522)
キーワード気象災害 / レーダー / 雲 / 降水
研究概要

これまでに偏波レーダーの観測から降水セル内部の鉛直方向の雨滴サイズの変化を推定するために必要なZdrの観測仰角依存の補正方法を開発した。Zdrは水平と垂直の受信電波の強度比であり、大粒の雨ほど扁平になるためZdrは高くなる。一方、雨が強い場合は仰角に加え減衰の影響も考慮する必要がある。一般に電波は降雨域伝搬中に減衰を受けるが、降雨強度が小さいときは、垂直/水平偏波の電波は伝搬中に同じような減衰を受けるため、Zdrへの影響は少ない。しかし豪雨時には、垂直/水平偏波の減衰量が異なるためZdrに影響があることが予想される。そこで今年度は精度を向上させるために降雨による減衰を補正する方法をシミュレーターを用いて検討し、実際の観測を用いてその検証を行なった。検証には気象研究所のC-band偏波レーダーと、約30km及び60km離れた地点に設置したディスドロメーターを用いた。高層観測によって推定される上空の気温を用いて、ディスドロメーターが地上で観測した雨滴の大きさからレーダーがその上空を観測する高度でのZdrの推定値をシミュレーターで計算し、これと仰角・減衰補正したレーダーのZdrを比較した。その結果、反射因子が30dBZ(雨量強度12ミリ)程度以上の並雨~強雨では推定値と観測値はよく一致した。しかし弱い雨の場合レーダーの観測精度が低下するため誤差がやや大きくなることが分かった。またレーダーで観測された減衰補正後の反射因子とZdrから降水強度を推定し、地上で観測された降水強度と比較したところ、特に雨が強い時は現在気象庁などが従来用いている推定手法に比べて高い精度で一致した。さらに豪雨をもたらす積乱雲は豪雨の発生前に雲内にZdrが高い(大粒の雨の)領域が含む傾向が見られ、また豪雨を伴わない雲ではZdrは低い傾向が見られた。これらの結果については気象学会や国際学会等で発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

豪雨の前兆現象を探知する可能性を探るためにこれまでにレーダーのシミュレーションを用い大粒の雨に対する偏波パラメータの感度の実験を行ない、仰角補正や降雨減衰補正について実際の観測で精度やアルゴリズムの検証を行なってきた。その結果レーダーから補正後に推定される偏波パラメータが実際の観測値と良く一致した。また豪雨をもたらす積雲では偏波パラメータのうちZdrが高くなる傾向があるなど、豪雨を発生させる積雲が事前に探知できる可能性もでてきた。これらのことから研究の目的はおおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

Zdrは雨粒の大きさの指標となるが数の指標とはならない。降水強度は雨粒の大きさと単位体積当たりの雨滴の個数で決まるため、Zdrだけでは豪雨が事前に探知しきれない可能性がある。そこで今年度はシミュレーターを用いて雨滴の個数に感度を持つ偏波パラメータと合わせて豪雨を事前に探知する手法を検討する。一方、本年度行なったレーダーシミュレータによる周波数依存特性の調査では、雲粒の観測に用いる波長1cm以下の短い波長帯では、偏波パラメータの一部が雨滴サイズの比較的平易な函数で近似できることが示唆された。これはこの波長では雲粒から雨粒に成長する過程が観測できる可能性があることを示唆している。そこで今年度は、レーダーシミュレータを用いて、レーダーを用いた雲水量などの推定のための手法について検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Detection of convective cells with a potential to produce local heavy rainfalls by a C-band polarimetric radar2011

    • 著者名/発表者名
      Adachi, A., T.Kobayashi H.Yamauchi, S.Onogi
    • 雑誌名

      Proceedings of SPIE, Remote Sensing of Clouds and the Atmosphere XVI

      巻: 8177 ページ: 8177101-6

    • DOI

      10.1117/12.897702

    • 査読あり
  • [学会発表] Rainfall estimation and detection of hazardous convective Gells with a Dual-Polarized C-band radar2012

    • 著者名/発表者名
      Adachi, A., T.Kobayashi H.Yamauchi, S.Onogi
    • 学会等名
      AGU Chapman Conference on Remote Sensing of the Terrestrial Water Cycle
    • 発表場所
      Waikoloa Beach Marriott Resort (USA)
    • 年月日
      2012-02-21
  • [学会発表] レーダーシミュレーターの偏波レーダー観測への応用(その2)反射因子差を用いた降水強度推定手法の特性2011

    • 著者名/発表者名
      足立アホロ、小林隆久、山内洋、小野木茂
    • 学会等名
      日本気象学会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
    • 年月日
      2011-11-18
  • [学会発表] 衛星搭載雲・降水レーダーにおける多重散乱2011

    • 著者名/発表者名
      小林隆久、足立アホロ、山内洋
    • 学会等名
      日本気象学会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
    • 年月日
      2011-11-16
  • [学会発表] Detection of convective cells with a potential to produce local heavy rainfalls by a C-band polarimetric radar2011

    • 著者名/発表者名
      Adachi, A., T.Kobayashi H.Yamauchi, S.Onogi
    • 学会等名
      SPIE Remote Sensing Co-located with SPIE Security+Defence
    • 発表場所
      Clarion Congress Hotel Prague (Czech Republic)
    • 年月日
      2011-09-22
  • [学会発表] 雲・降水レーダーシミュレーターの開発:3-雨滴生成モデル-2011

    • 著者名/発表者名
      小林隆久、増田一彦、足立アホロ、山内洋
    • 学会等名
      日本気象学会
    • 発表場所
      国立オリンピック記念青少年総合センター(東京)
    • 年月日
      2011-05-18

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公開日: 2013-06-26  

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