申請者は、ゲノムワイドな遺伝子機能解析を目的とし土壌微生物である細胞性粘菌の網羅的遺伝子破壊株の作製を行ってきた。得られた遺伝子破壊株のなかに、野生株に比べ増殖が極端に早く、かつ一生が早く終わる株が見つかった。この原因遺伝子を野生株において過剰に発現させると、逆に増殖が極端に遅くかつ一生が長くなった。この相同遺伝子は線虫、ショウジョウバエ、マウス、ラット、ニワトリ、ヒトを含む多くの動物種に存在し、ヒトの相同遺伝子をこの遺伝子破壊株に発現させると増殖速度の増加や寿命の短縮が相補されることもわかった。このことは、この遺伝子がヒトにおいても、同様な機能を有している可能性が非常に高いことを示唆している。 本研究は、この新規寿命遺伝子の制御遺伝子と被制御遺伝子を同定し、その寿命制御機構を明らかにすることを目的とした。 本年度はFRET法による相互作用検出系により、この遺伝子産物がGα2と相互作用すること、さらに下流のrab遺伝子産物の同定を行った。さらに、rabGAP遺伝子産物がcAMP合成に関しており、カフェインがこの経路に直接あるいは間接的に作用していることを生化学的に証明した。
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