研究概要 |
申請者は、ゲノムワイドな遺伝子機能解析を目的とし土壌微生物である細胞性粘菌の網羅的遺伝子破壊株の作製を行ってきた。得られた遺伝子破壊株のなかに、野生株に比べ増殖が極端に早く、かつ一生が早く終わる株が見つかった。この原因遺伝子を野生株において過剰に発現させると、逆に増殖が極端に遅くかつ一生が長くなった。この相同遺伝子は線虫、ショウジョウバエ、マウス、ラット、ニワトリ、ヒトを含む多くの動物種に存在し、ヒトの相同遺伝子をこの遺伝子破壊株に発現させると増殖速度の増加や寿命の短縮が相補されることもわかった。このことは、この遺伝子がヒトにおいても、同様な機能を有している可能性が非常に高いことを示唆している。 本研究は、この新規寿命遺伝子の制御遺伝子と被制御遺伝子を同定し、その寿命制御機構を明らかにすることを目的とした。 前年度において共免疫沈降法による相互作用検出系により、この遺伝子産物がGα2と相互作用すること確認した。今年度は当該遺伝子産物がGα9とも相互作用することを見出した。また、最終年度の主要な目標である当該遺伝子産物とcAMPカスケードとの分子レベルでの関連の解析を行った。その結果、当該遺伝子産物はcAMPの分解ではなくcAMPの合成に直接的に関わるという知見を生化学的な解析から得ることができた。 以上の結果を原著論文としてまとめ、査読付き国際専門誌に投稿した。また、前年度rabGAP以外の遺伝子産物の中にカフェイン依存的なcAMP合成経路に関わる遺伝子の解析結果については、査読付き国際誌に掲載された(Kuwayama, Scientific Reports, 2, Article number: 577, 2012)。
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