研究概要 |
前年度に引き続き、シロイヌナズナの純系T-DNA挿入ライン(ABRC CS27941,CS27942,CS27951,CS27952)を対象として、芽ばえの物性を形質指標とするフェノーム解析を実施した。解析には、種子セットの構成ラインをSALK No.に沿って対象として行く網羅的なアプローチと、物性変化を生ずる可能性が高い細胞壁代謝、微小管の構築と機能、並びに細胞膜構成成分の合成と機能に関わる遺伝子のラインを対象とした選択的なアプローチの2つを併用した。前者に関しては、解析の効率を考慮して、物性を示す5つのパラメータのうち全伸展性のみを測定した。一方、後者の解析では、荷重-伸び解析法と応力緩和法を連続的に適用するプログラムを用いた。解析の進展に伴って、一部のラインでは種子の発芽率が保存中に急速に低下することが判明した。この現象がT-DNA挿入による遺伝子破壊に起因するかどうかを検証するため、入手以来、保管期間が3年を経過したCS27941及びCS27951をABRCより再度提供してもらい、追加解析を行った。両方のアプローチに共通して、成長速度に顕著な変化を示したラインは少なかったが、伸展性にはより高い割合で変化が見られた。ただし、物性変化を示すことが予想された後者の解析対象の中にも、全く成長速度や物性に変化を示さないラインが多く含まれており、遺伝子機能の欠損が他の遺伝子によって補償される現象が普遍的に存在することがわかった。また、本研究での基本的な培養条件である暗所、貧栄養下では、成長形質や物性がより安定的に制御されている可能性について、予備的に検討した。
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