22年度は、XRCC1と相互作用する新規クロマチンリモデリングタンパク質のsiRNAによるノックダウンを行い、これが酸化DNA損傷を引き起こす過酸化水素処理に対して細胞の感受性を増大させることを見出した。これに基づき、23年度は実際にDNAの損傷が、新規クロマチンリモデリングタンパク質のノックダウンによって低下しているかについて定量を行うこととした。当初、コメットアッセイによって解析を行うことを試みたが、個々の細胞によって値が大きく異なり、説得力のあるデータを得ることができなかった。おそらく、siRNAの効果が個々の細胞によって異なり、したがって1つ1つの細胞においてDNA修復活性が異なる結果となったのではないかと思われる。コメットアッセイによる解析は今後も修正をしつつ続行するが、他の方法で示すことを考えた。1つは細胞核でDNA損傷が出来た際に損傷部位にDNA修復タンパク質が蓄積してfociを形成することが修復が進行していることの指標に用いられていることに着目し、このfociが、新規クロマチンリモデリングタンパク質をノックダウンしたときに形成されるか否かについて解析を行うというものである。これについては、再現性のある結果が得られている。これまでのところ、ノックダウン細胞ではDNA修復タンパク質の1つであるPARPIのfoci形成が低下していることが分かった。今後はXRCC1のfociも形成されなくなっているのか、確認することにしている。さらに、新規クロマチンリモデリングタンパク質は核内でfociを形成するが、DNA損傷後に生じたPARPI fociはクロマチンリモデリングタンパク質のfociとほとんどすべて共局在していた。これらの結果は、今回我々の同定した新規クロマチンリモデリングタンパク質が、DNA損傷修復に関与していることを示唆していると考えている。
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