研究課題
加齢は多くの病気の最大の発症要因である。本研究は、老化や長寿に関連すると考えられる遺伝子の遺伝素因(多型・変異)が、健康長寿や虚弱性(frailty)、高血圧、糖尿病、動脈硬化症といった生活習慣病に及ぼす影響を明らかにし、疾病の病態解明やゲノム創薬に繋げることを目的としている。本年度は本研究課題の核となる高齢者コホート研究(関西健康長寿研究)を大阪大学人間科学部、歯学部と連携し開始した。本研究は100歳、90歳、80歳、70歳の都市部・山間部在住の高齢者計1700名程度を対象に、遺伝素因、血圧やその他の生活習慣病の状態、動脈硬化度、肺機能といった医学的側面、生活歴、学歴、家庭環境、性格、認知機能などの心理学的側面、口腔内衛生状態といった多面的に健康長寿に関わる要因を検討する我が国でも初めての高齢者コホート研究である。22年度はこの研究の倫理審査を申請し、承認され、研究を開始した。都市部として兵庫県伊丹市ならびに第一次産業が盛んな山間部の朝来市の一般住民を対象にコホートを開始し、平成22年度に70歳前後約500名、本年度は80歳前後約500名の遺伝子採血を含む検診を遂行した。また100歳以上の超高齢者の訪問調査も本年度より開始した。来年度以降も継続していく。本健康長寿研究の対象者において、心筋梗塞など冠動脈疾患(CAD)のリスク遺伝子である染色体9p21領域ANRILの遺伝子多型とANRIL遺伝子の発現を解析した。CADのリスクアレルを有するヒトではANRILの発現が低下しており、また頸動脈硬化のある群では有意にANRIL遺伝子発現が低下していたことからCADとの関連メカニズムがわかっていなかったANRIL遺伝子のヒトでの動脈硬化への関与の機序を証明し発表した(Congrains A, et al.therosloersis 2012)。本ANRIL遺伝子は高齢者の虚弱(frailty)への関与も指摘されており本研究は長寿関連遺伝子の遺伝素因が、心血管病の発症・進展と関連している証拠となる知見である。
2: おおむね順調に進展している
計画してきた健康長寿コホート研究を予定通り遂行できているため。
平成24年度は90歳前後の400名と百寿者対象者の検診を完了する。これにて70,80,90,100歳以上のすべての高齢者のデータが揃い断面であるが多くの健康長寿要因の比較検討が可能となる。
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