研究概要 |
我々は2型糖尿病の罹患同胞対法を用いた全ゲノム連鎖解析の結果に基づいて、21番染色体上に2種類の統計学的に有意な遺伝子を見出した。KCNJ15とLSSである。 1) KCNJ15がヒトβ細胞で発現すること、リスクアレルがKCNJ15タンパクの発現を調節し、2型糖尿病のリスクを1.76倍上昇させ、さらに肥満を有さない群では2.5倍のリスクとなること、しかしデンマーク人ではリスクアレルの頻度が極めて低いため糖尿病発症リスクへの影響が基準以下となることなどを報告した(Am J Hum Genet 86 : 54-64, 2010)。糖尿病とKCNJ15の関連が指摘されたのは今回が初めてであることからKCNJ15のチャネル機能を評価した報告はまだない。そこでKCNJ15チャネルのカレントを測定するために、KCNJ11遺伝子、KCNJ15遺伝子(正常アレルと変異アレル)をβ細胞由来INS-1細胞に導入するところまで今年度内に達成できた。次年度にはパッチクランプ法を用いてカレント測定を行う。また高血糖負荷時、Kチャネルに結合する糖尿病治療薬を投与した場合のカレントを、野生型、リスクアレル型の両方について観察し、比較検討する予定である。 2) LSSについては、日本人に加えて韓国、デンマーク、英国(Welcome trust genotyping dataへのアクセスによる検討)においても糖尿病発症リスクの再現性を検証することができ、人種を超えて2型糖尿病感受性遺伝子として作用することを確認した。さらにコレステロール代謝やインスリン抵抗性と関連することを認めており、間もなく投稿する予定である。
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