研究計画の初年度は、凍結保存血液をハプロタイプ解析試料として利用するための技術開発を予定通り行った。開発した技術は、(1)細胞のゲル内埋め込み(2)ゲル内拡散(3)サイズの小さなDNA除去、の3点に関連する技術である。(1)では、血中細胞に含まれるDNAを抽出せずかつ定量的にアガロースゲルへ埋め込むため、核DNAを保有する血中細胞のみを簡便に計数する方法を検討した。その結果、スライドガラス上に血中の全細胞を塗布乾燥してから蛍光色素で核DNAを染色し、顕微鏡的な観察により正確な計数を行うことにした。(2)では、鋳型DNAが極力細断されない状態で1分子レベルの限界希釈するため、既存のゲル内埋め込み実験条件の改善を行った。その結果、80℃で保温状態のアガロースゲル溶液に血中細胞を直接添加し、そのまま振動を与えず保温しながらゲノムDNAを穏やかに自然拡散させる反応条件を確立した。(3)では、拡散の過程で生じる細断化DNAについて、DNAが埋め込まれたゲルを電気泳動し、サイズの小さな分子を選択的に取り除くことで、ゲル内に残留する長鎖DNAの頻度を高めることにした。5名分の凍結保存血液試料を用いて試行を行ったところ、良好なハプロタイプ解析結果を得ることができた。今年度は解析検体数を50名に増やし、統計学的ハプロタイプ推定法と実験的決定法との詳細な比較を行う予定である。
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