研究課題/領域番号 |
22510216
|
研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
平本 正樹 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所・糖尿病研究センター・代謝疾患研究部, 栄養障害研究室長 (70297828)
|
キーワード | ゲノム / 糖尿病 / 疾患感受性遺伝子 / 一塩基多型 / ナノビーズ |
研究概要 |
本研究で対象とするKCNQ1遺伝子は、日本人において重要な2型糖尿病関連遺伝因子である。しかし、疾患に関連する一塩基多型(SNP)は、KCNQ1遺伝子のイントロン領域に集中しており、疾患感受性SNPが2型糖尿病発症リスクを高めるメカニズムは依然不明である。そこで本研究では、疾患感受性SNPの機能的意義を、分子レベルで解明することを目的とする。 平成22年度には、ナノビーズ技術を用いて、KCNQ1遺伝子のSNP領域に結合する新規因子(以降、KSBFs)の単離・同定を行い、KSBFsのSNP領域への結合と、ノンリスクアリル・リスクアリル間での結合の差異とについて確認した。平成23年度には、同定したKSBFsについて、以下の解析を行った。1.SNP周辺を転写制御領域とするレポーターベクターを作製し、KSBFs発現ベクターとともに細胞にトランスフェクションし、KSBFsによるSNP周辺領域を介した転写制御能について解析を行った。その結果、KSBFsは、転写制御領域にノンリスクアリルを有する場合にのみ、SNP周辺領域を介した転写を促進できることが示された。2.種々のヒト由来細胞株について、SNP周辺領域のシークエンスを行い、ノンリスクアリル・リスクアリルのいずれを有するか決定した。KSBFsのノックダウンによって、ノンリスクアリルを有する場合にのみ、発現量が変化する遺伝子が、疾患感受性SNPと2型糖尿病発症リスクとを繋ぐ鍵分子と考えられる。現在、KCNQ1遺伝子およびその近傍遺伝子について、アリル間(細胞間)での比較解析を進行中である。 疾患感受性SNPが集中するKCNQ1遺伝子領域において、アリル特異的にDNAに結合する因子が同定され、転写に関与することが示されたことは、疾患感受性SNPの機能的意義の解明へ向けた大きな前進であり、意義深いと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SNPを含むイントロン周辺の塩基配列は種間の相同性が高くないため、ヒト由来の細胞を用いた解析が必要となる。ところが、ノンリスクのアリル頻度が低いため、ノンリスクアリルを有するヒト由来細胞株の入手に時間を要した。そのため、ヒト由来の細胞株を用いた機能検証が進まなかったが、現在は既に入手できており、解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、KSBFsによって制御される遺伝子、あるいは未知の転写産物を明らかにし、膵β細胞機能との関連について解析を進めることにより、疾患感受性SNPと2型糖尿病発症との関連について、分子レベルでの解明につながると考えられる。また将来的には、糖尿病の新薬創製に向けた基礎データとなるとともに、機能ゲノム学の進歩にも役立つと考えられる。
|