研究課題
クロマチンの構造を解析するには、DNase Iなどのヌクレアーゼに対する感受性を指標に推定する方法や、タンパク質成分の有無をフェノール抽出により判断する方法が行われてきました。前者はヌクレアーゼ切断から回避された画分をclosedなクロマチン構造が濃縮したものと評価し、後者ではフェノール処理後の水層に回収される画分をタンパク質が乏しいopenなクロマチン構造と評価してきました。両方法ともクロマチンがopenとclosedのどちらか一方からのみ構造を推定するほう方法であり、中間状態もとり得る柔軟性を持つべき生体内構造クロマチンの評価には不都合な点を案じさせました。そこで、本研究課題において、openな構造とclosedな構造を生化学的に分離分取することが可能なSEVENS法の汎用性を向上させ、その応用によりクロマチン構造の新たな側面を見いだし、その存在意義を議論することを立案しました。前年度までにSEVENS法の改良を完了したことにより、異なる細胞間でのクロマチン構造を比較することが可能となりました。そこで、今年度はこの方法を由来の異なる4種類のヒト細胞株に応用し、複数のプロモーターから発現するCYP19遺伝子のクロマチンを解析しました。その結果、各細胞の各プロモーターのクロマチンには、完全なopenと完全なclosedの構造に加えて、中間状態のクロマチンの存在が確認されました。興味深いことに、このような中間的な構造をとるプロモーターからは中程度の発現が見られ、SEVENS法で観察されるクロマチン構造がプロモーター活性に対してよく相関することが示唆されました。この研究成果は、転写因子の同定が中心であった従来の転写研究を、クロマチン構造から解析する新たなストラテジーを提案するものと思われます。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Immunol.
巻: 189 ページ: 4237-4246
10.4049/​jimmunol.1201476