研究概要 |
(1)全ゲノムDNA配列を決定した酢酸菌Acetobacter pasteurianusの代謝組織図を、豊富に存在する細菌の代謝に関する教科書や酢酸菌の代謝に関する文献を参考に、さらにKEGG2(Kanehisa,NAR,2008)やBioCyc(Caspi,NAR,2006)のゲノム情報に基づく細菌の代謝経路ごとのデータを導入し、網羅的にかつ俯瞰できる代謝全体像を描き出した。トランスポーターなどの膜タンパク質の同定はSOSUIやP-SORTを用い、基質に関しては既知の酵素との比較に基づき同定した。 (2)完成させたA.pasteurianusの代謝経路図を用いて、さらにゲノム情報を解読したGluconacetobacterxylinusなどゲノム情報を利用可能な酢酸菌類縁菌の代謝を一瞥で比較できる比較代謝経路図を自動的に作成するシステムを完成させた。ただし、特定の酢酸菌が有する特殊な代謝経路(たとえばバクテリア・セルロースの生産経路や高濃度グリセロール代謝経路)および複雑に交差する反応経路の描写方法については、基本的な代謝マップ作成法は完成したが、実際の代謝との関連・相関性を確認中である。 (3)A.pasteurianus 3283-01株は、グリセロールを唯一の炭素源として増殖し、酵母の増殖を促す分子量180の中和糖を生産する。この酢酸菌を用いて、粗グリセロールを炭素源として培養したところ、正常に増殖し糖を蓄積することが明らかとなった。粗グリセロールを用いたバイオエタノールの生産のための複合発酵系を構築することをめざし、筑野食品工業株式会社の協力を得て開発を進めている。また、高濃度グリセロール代謝能を有する酢酸菌の育種を進めている。既に得られた育種株については、次年度ゲノム解析を進める予定である。
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