本研究は、次世代シークエンサーを用いてNocardia brasiliensis IFM 0406のゲノムをシークエンスし、本菌が生産する複数の生物活性物質の生合成遺伝子の同定を試み、より多くの未知ゲノムにアプローチするための手法の確立を目指すことを目的とする。 IFM 0406ゲノムに見出された二次代謝産物生合成遺伝子クラスターのうち、II型ポリケチド合成酵素遺伝子と予測される遺伝子を含むクラスター(hsnと命名)をクローニングするために、コスミドライブラリーをRed-ET法を用いてタグ付けすることによりコスミドをスクリーニングした結果、複数のコスミドによりhsnクラスター全体を得ることができた。次にRed-ET法でタグとして用いたマーカー遺伝子を取り除くために、当該領域を含む断片を染色体DNAからPCRで増幅し、in-fusionを用いてクローニングした。 一方、hsnクラスターには、二次代謝産物生合成遺伝子クラスターに特徴的に存在するSARPファミリーに属すると予測される遺伝子が2個(SARP1およびSARP2)存在するため、これを人為的に過剰発現することで、クラスター全体の発現の活性化を試みた。まずSARP1とSARP2それぞれをNocardia-E. coliシャトルベクターにクローニングし、さらにSARP1とSARP2をタンデムに連結し、同時に発現されるようにしたものも構築し、IFM 0406で発現させた結果、SARP1とSARP2を同時に発現させた時のみに生産される物質がHPLCで確認され、これがhsnクラスターに支配される二次代謝産物であると考えられた。
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