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2011 年度 実績報告書

陸棲シアノバクテリアが営む無水生活様式を司る機能性分子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22510227
研究機関金沢大学

研究代表者

坂本 敏夫  金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (70324069)

キーワード極限環境生物 / 抗酸化活性 / 細胞外マトリクス / 紫外線
研究概要

陸棲シアノバクテリア(Nostoc Commune)は乾燥状態で100年以上の長期にわたり生命を維持し,吸水することによって生命活動を再開する。本研究は,細胞外マトリクス,紫外線吸収物質,抗酸化物質に着目し,これらの機能性分子の詳細な役割を明らかにすることを目的とする。(1)本生物は紫外線吸収物質としてMycosporine like amino acid (MAA)およびスキトネミンを持つ。本生物で見いだした吸収スペクトラムの異なる2種類のMAAを精製し化学構造解析を行った。その結果,それぞれ分子量478Daおよび1050Daの新規の化学構造を持つMAA配糖体であることが分かった。また,これらのMAA配糖体が抗酸化活性を示すことを明らかにした。さらにスキトネミンを精製し,本物質が抗酸化活性を示すことを明らかにした。以上の結果は,MAA配糖体およびスキトネミンが紫外線防御だけでなく酸化ストレスに対する防御にも働く多機能性分子であることを示す。(2)細胞外マトリクスを持つ水棲シアノバクテリアNostoc Verrucosum(アシツキ)とN.Communeとの間で比較解析を行った。その結果,N.Verrucosumは,乾燥耐性を示さないが乾燥ストレス処理に応答して非還元二糖トレハロースを蓄積すること,これまで細胞外マトリクスタンパク質としてN.Communeだけで報告されていたWspAを持つこと,および細胞外多糖を構成する単糖の組成は異なるがその化学的性質は類似していることを明らかにした。(3)国内外の約140地点から採集したN.Communeの試料について遺伝子型の解析を実施した。この結果,外見上区別することが困難なN.Communeに遺伝的多様性が発見され,日本国内におけるN.Communeは4種類の遺伝子型に大別されることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初に計画していた研究項目について,4件の学術論文として研究成果を発表することができた。また,新規の紫外線吸収物質および抗酸化物質を発見することができ,研究開始時点では未知であった研究項目を次年度に継続して研究することが可能となった。

今後の研究の推進方策

これまでの研究により見いだしている第3のMAA配糖体について化学構造を決定する。また,N.Commune抽出物中に検出されている抗酸化物質を精製し化学構造解析を実施する。さらに,N.Communeの遺伝子型の違いによって産生する紫外線吸収物質の型が異なるのか否かについて解析を進める。これらによりN.Communeの多様化と環境適応のメカニズムの解明を推進する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Molecular genetic and chemotaxonomic characterization of the terrestrial cyanobacterium Nostoc commune and its neighboring species2012

    • 著者名/発表者名
      Arima, H., Horiguchi, N., Takaichi, S., Kofuji, R., Ishida, K., Wada, K. and Sakamoto, T
    • 雑誌名

      FEMS Microbiol. Ecol

      巻: 79 ページ: 34-45

    • DOI

      DOI:10.1111/j.1574-6941.2011.01195.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The cyanobacterial UV-absorbing pigment scytonemin displaysradical-scavenging activity2012

    • 著者名/発表者名
      Matsui, K.
    • 雑誌名

      J.Gen.App.Microbiol.

      巻: (in press)

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel glycosylated mycosporine-like amino acids with radical scavenging activity from the cyanobacterium Nostoc commune2011

    • 著者名/発表者名
      Matsui, K., Nazifi, E., Kunita, S., Wada, N., Matsugo, S. and Sakamoto, T.
    • 雑誌名

      Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology

      巻: 105 ページ: 81-89

    • DOI

      DOI:10.1016/j.jphotobiol.2011.07.003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The extracellular-matrix-retaining cyanobacterium Nostoc verrucosum accumulates trehalose, but is sensitive to desiccation2011

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto, T.
    • 雑誌名

      FEMS Microbiol.Ecol.

      巻: 77 ページ: 385-394

    • DOI

      10.1111/j.1574-6941.2011.01114.x

    • 査読あり
  • [学会発表] 陸棲シアノバクテリア(イシクラゲ)の細胞外多糖とその生理機能2012

    • 著者名/発表者名
      坂本敏夫
    • 学会等名
      第4回高資源循環ポリマーセンターシンポジウム
    • 発表場所
      北陸先端大学・品川キャンパス(東京都)(招待講演)
    • 年月日
      20120313-20120314
  • [学会発表] 陸棲ラン藻Nostoc communeのもつ紫外線吸収色素と遺伝子型の多様性2011

    • 著者名/発表者名
      山場みなみ
    • 学会等名
      ラン藻の分子生物学2011
    • 発表場所
      かずさアカデミアホール(千葉県)
    • 年月日
      20111202-03
  • [学会発表] 水棲ラン藻Nostoc verrucosum(アシツキ)の紫外線吸収色素2011

    • 著者名/発表者名
      辻智栄理
    • 学会等名
      ラン藻の分子生物学2011
    • 発表場所
      かずさアカデミアホール(千葉県)
    • 年月日
      20111202-03
  • [学会発表] Novel glycosylated mycosporine-like amino acids with radical scavenging activity from the cyanobacterium Nostoc commune2011

    • 著者名/発表者名
      Ehsan Nazifi
    • 学会等名
      ラン藻の分子生物学2011
    • 発表場所
      かずさアカデミアホール(千葉県)
    • 年月日
      20111202-03
  • [学会発表] 陸棲ラン藻の起源を探る2011

    • 著者名/発表者名
      坂本敏夫
    • 学会等名
      ラン藻ゲノム研究交流会
    • 発表場所
      東京大学・駒場キャンパス(東京都)
    • 年月日
      2011-07-02
  • [備考]

    • URL

      http://photon.w3.kanazawa-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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