研究課題
インドール-3-酢酸(IAAと略す)は、植物の生長制御に関わる植物ホルモン(オーキシン)の1種である。IAAの細胞あるいは組織内濃度は、異化代謝(代謝と略す)および植物体内の輸送のバランスによって調節される。IAAの代謝は主に酸化代謝・抱合体形成・脱炭酸反応によって行われている。研究代表者はこれまでに、シロイヌナズナやイネなどに含まれるIAA代謝物の同定ならびに定量を行った結果、酸化代謝物が最も多く存在し、酸化代謝が植物におけるIAA代謝の中心的役割を果たしていることを明らかにした。酸化代謝は不可逆的であり、代謝物はオーキシン活性を失うことから、この代謝反応はIAAの不活性化に関わるものと考えられている。このように、酸化代謝はIAAの濃度調節にとって重要な役割を担っているにもかかわらず、酸化反応に関与する酵素など、詳細なメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、IAAの酸化代謝反応に関わる酵素の同定を目的として、この反応を阻害する低分子化合物をスクリーニングによって見出し、それを化学プローブとして酵素同定に活用することを目指した。本年度においては、効率的スクリーニング法の確立を行った。質量分析によるIAA代謝物の定量法はこれまでの研究によって確立されており、1サンプルあたり約20-30分で行うことが可能であった。しかしながら、この分析法を阻害剤スクリーニングに応用する場合、さらなる分析時間の短縮化が必要である。そこで近年開発されたコアシェル型HPLCカラム(高流速で高分離能を有する)を用いてIAA代謝物の分析を行ったところ、1分析あたり10分程度へと短縮できることが明らかとなった。この分析法とともに、抽出法を工夫することで効率的なスクリーニング法の確立することができた。
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Phytochemistry
巻: 72 ページ: 7-13