研究課題/領域番号 |
22510228
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮川 恒 京都大学, 農学研究科, 教授 (10219735)
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キーワード | 植物ホルモン / オーキシン / 異化代謝 / 質量分析 / スクリーニング |
研究概要 |
インドールー3-酢酸(IAAと略す)は、植物の生長制御に関わる植物ホルモン(オーキシン)の1種である。IAAの細胞あるいは組織内濃度は、異化代謝(代謝と略す)および植物体内の輸送のバランスによって調節される。IAAの代謝は主に酸化代謝・抱合体形成・脱炭酸反応によって行われている。研究代表者はこれまでに、シロイヌナズナやイネなどに含まれるIAA代謝物の同定ならびに定量を行った結果、酸化代謝物が最も多く存在し、酸化代謝が植物におけるIAA代謝の中心的役割を果たしていることを明らかにした。酸化代謝は不可逆的であり、代謝物はオーキシン活性を失うことから、この代謝反応はIAAの不活性化に関わるものと考えられている。このように、酸化代謝はIAAの濃度調節にとって重要な役割を担っているにもかかわらず、酸化反応に関与する酵素など、詳細なメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、IAAの酸化代謝反応に関わる酵素の同定を目的として、この反応を阻害する低分子化合物をスクリーニングによって見出し、それを化学プローブとして酵素同定に活用することを目指した。本年度においては、IAAとは異なるオーキシンであるインドール3-酪酸(IBAと略す)の植物体内での代謝反応に注目し、IAAと同様にIBAも酸化代謝が主要な経路となるかについて調べ、IAA酸化酵素阻害剤の探索において阻害効果の指標物質として用いるべきか検討した。イネ植物体からIBA関連代謝物の探索を質量分析計を用いて行ったところ、IBAにおいてもIAAと同様に酸化体が主要代謝物であることが判明した。このことから、IBAも酸化代謝阻害効果の指標として測定しておく必要のあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究実績に記載したとおり、IAAの酸化代謝に対する阻害効果の指標として、同じインドール構造を有するIBAについても調べる必要性が生じ、その探索や分析条件の確立に時間を要した。そのため、当初予定していた化合物のスクリーニングに取りかかることができず、研究の進展がやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立したIAA酸化阻害剤の効率的スクリーニング法を用いて、また昨年度明らかとなったIBAの酸化代謝にも注目しつつ、新規IAA酸化代謝阻害剤の発見を目指して様々な低分子化合物のスクリーニングを進める。なお、活性化合物の探索効率を高めるため、ランダムスクリーニングに加えてこれまでにIAAの酸化反応を阻害することが示唆されている化合物についてもその効果を検証する。
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