環境変化に対する酵素ヘムオキシナー(HO)の適応の具法を見出す目的で、H22年は以下の取り組みが行われた。 1.フグ酵素の発現と精製:トラフグの脾臓からcDNAをクローン化し、大腸菌発現系で再構成タンパクTfrHO1を得た。これを用いて、ヘム複合体の形成、複合体の分光学的特徴、ヘム分解の速度論解析を行った。またEPRおよびNMR法により、ヘムの配位環境についての詳細な知見を得た。 2.酸-塩基解離平衡定数を決定し、ヘム複合体の第六配位子である水のpKaがラットHO1と比較して0.6ほど大きく、ヘムポケットを構成するアミノ酸の保存性が極めて高い 事実からの予想とは大きく異なっていた。ヘムの周辺構造を微妙に変えることで、ヘム分解の調節を行っている可能性が強く示唆された。 3.生理的還元系であるNADPH/CPRまたは人工的還元系であるアスコルビン酸を電子供与体として、ラットとフグHO1についてヘム分解速度を比較した結果、大きな違いが有ることを見出した。酵素系との共役ではヘム分解の初速度が1.5倍速く、アスコルビン酸との共役では速度がおよそ半分であった。 4.ラットとフグHO1について、ヘム分解活性のpH依存性を詳細に検討した。pH6.0-9.5で、NADPH/CPR共役系では共にpH7.5でヘム分解速度は最大となるが、ラットでは塩基性側でヘムへのOHイオンの配位が起こり活性が阻害されるのに対して、フグではこれがほとんど起こらないことがわかった。また、アスコルビン酸ではきわめて対照的なpH依存性を示し、ラットでは酸性側で高活性、フグでは弱塩基性側で高活性を示した。 以上の結果について、論文執筆中である。 5.酸素濃度計を用いて酵素溶液中の微量酸素を正確に定量するシステムを構成し、予備実験を行った。次年度において詳細なHO反応の酸素濃度依存性を測定する予定である。
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