研究概要 |
植物に広く分布するフラボノイドの一種フラボノールは,マメ科植物と根粒菌との共生過程において重要な役割を果たすことが示唆されているもののその役割や生合成調節機構について明確な知見が乏しい.本研究では,その生合成に関わるフラボノール合成酵素(FLS)遺伝子の発現を誘導する根粒菌由来の未知因子を同定し,その誘導因子をつくらない根粒菌変異株の共生能力を調べることで,フラボノールなど誘導性植物成分の共生窒素固定における役割を明らかにする. 平成23年度では,前年度に引き続きFLS遺伝子の誘導因子を同定するための生物検定法の確立を試みた.当初計画では,FLS1遺伝子のプロモーターの下流にレポーター遺伝子としてβ-グルクロニダーゼGUS遺伝子を連結したベクターを用いて,増殖が容易な毛状根培養系を用いる予定であった.しかし,FLS遺伝子の発現には地上部(茎葉)の存在が必須であることが22年度の知見から明らかとなった.そこで,同ベクターを導入したAgrobacterium tumefaciens EHA101株を胚軸感染法によりミヤコグサ用植物の胚軸に接種し,これを再分化させて形質転換ミヤコグサを作製した.このプロモーター活性検定用植物に対して根粒菌を接種し,X-glucを用いて組織化学的にGUS活性を調べたところ,シグナルは成熟根粒の周囲で観察されたが,感染初期には観察されなかった.すなわち,根粒菌由来の誘導活性物質の検定には,根の抽出物を調製して蛍光基質と反応させるなど,より高感度の検定法が必要であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FLS1遺伝子プロモーター誘導活性を検定する手段として,同プロモーターの下流にレポーター遺伝子を連結したベクターを導入した植物材料を作製した.当初は増殖が容易な毛状根培養系を用いる予定であったが,FLS1遺伝子の発現には地上部由来の未知因子が必須であることがわかり,時間がかかる再分化植物体を作製したため.
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