アトピー性皮膚炎などの治療に不可欠なかゆみ抑制薬の開発を目指し、数種のモデルマウスを用いて、かゆみの発症・増悪化因子の解明と天然資源からのかゆみ抑制物質の探索を行った. 1. ストレスによるかゆみの増悪化モデルの構築:前報で確立した直接床電撃刺激法によるストレス負荷法を再検討し、より短期間に、再現性良く、ストレス負荷できる条件へと改変し、ストレスホルモンである血中コルチゾール濃度の増加を伴う掻動作回数(かゆみ回避反応)の増悪モデルの確立を行った。一方、身体への電気刺激を行わない精神的ストレス負荷によるモデルについても検討を行ったが、こちらは再現性が無く、更なる検討が必要であると判明した。 2. ストレスによるかゆみの増悪化因子の解明:プロテオーム解析による増悪化に関連するタンパク質因子の探索を試みた。当初用いた銀染色法による解析では、ゲル間のゆがみによる誤差で発現量の少ないタンパク質の解析が困難であることが判明した。そこで、次に蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動法を試みた。現在までに、十分な可溶性タンパク質画分を得ることが可能なマウスの腸粘膜組織を試料にした分析条件を検討し、銀染色法では見出せなかった差異タンパク質スポットの検出とMALDI TOFMSによる同定に成功した。今後は、皮膚や末梢血管組織を用いてかゆみの増悪化因子を解析する。 3. In vivoアッセイ法を用いたかゆみ抑制物質の探索:マウスの掻動作回数(かゆみ回避反応)を指標としたアッセイ法を用いTrifolium repens、Sophora japonica、Arachia hypogaea、Hypericum patulum、Camellia nitidissimaなど数種の天然資源の抗かゆみ活性を順次、評価した。現在、新たに活性を見出した2種の植物から抗かゆみ物質の単離を継続中である。
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