研究概要 |
本申請では、「多分岐複合糖質糖鎖化学合成へのアプローチ」を取り上げ、合成化学的に極めて構築困難な糖鎖分岐構造の、収斂的糖鎖構築へ向けた新規方法論を開発し、結核菌細胞壁成分のアラビノガラクタンや、腫瘍の転移や浸潤に関与が示唆される複合型糖タンパク質糖鎖などの構築を目的とする。本研究では、1)アラビノガラクタンの多分岐構造、2)分泌系複合型糖タンパク質糖鎖の多分岐構造をターゲットに研究を進める。両者に含まれる多分岐構造構築は反応効率の点で大問題があり、その問題解決は必須である。そこで本年度は結核菌由来アラビナン多糖の新規収斂的手法、及び、分岐構造構築ストラテジーの開発研究を行った。分岐構造は単糖程度の供与体を用いて構築し、その分岐フラグメントを、より安定で保存可能でかつ温和な条件下活性化可能なチオグリコシドへと3工程で効率的に変換することに成功した。この分岐構造を有する糖供与体に対して、他の分岐フラグメントを直線部分で接続する合成ルートで、4分岐構造を効率的に構築することができた。本ストラテジーはさらに大きな糖鎖への変換にも応用可能であると考えている。なお、フラグメントの合成には、立体選択的構築困難な1,2-cis-グリコシド結合があり、遠隔立体制御による分子内アグリコン転移にて、高立体選択的に構築することができた。今後、高度に分岐した構造の構築には特殊反応場の反応加速効果の利用を計画しているが,溶媒凍結条件において、種々反応条件下、反応加速、立体選択性について詳細に検証し、凍結による濃縮効果について知見を得た。
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