研究課題/領域番号 |
22510243
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石渡 明弘 独立行政法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (70342748)
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キーワード | 糖鎖合成 / オリゴ糖 / 立体選択的合成 / 収斂的合成 / グリコシル化 / 多分岐糖鎖 / 複合糖質糖鎖 |
研究概要 |
本申請では、「多分岐複合糖質糖鎖化学合成へのアプローチ」を取り上げ、合成化学的に極めて構築困難な糖鎖分岐構造の、収斂的糖鎖構築へ向けた新規方法論を開発し、結核菌細胞壁成分のアラビノガラクタンや、腫瘍の転移や浸潤に関与が示唆される複合型糖タンパク質糖鎖などの構築を目的とする。本研究では、1)アラビノガラクタンの多分岐構造、2)分泌系複合型糖タンパク質糖鎖の多分岐構造をターゲットに研究を進める。両者に含まれる多分岐構造構築は反応効率の点で大問題があり、その問題解決は必須である。そこで本年度は昨年度の成果をふまえ、結核菌由来アラビナン多糖の4分岐31糖構造の収斂的合成手法による構築検討、及び、分岐構造構築ストラテジーの開発研究を行った。22糖合成で培ったノウハウは、そのまま応用できることを確認した。すなわち、分岐フラグメントを、より安定で保存可能でかつ温和な条件下活性化可能なチオグリコシドへと3工程で効率的に変換した後に、』この分岐糖供与体に対して、他の分岐フラグメントを直線部分で接続する合成ルートで合成した。さらに立体選択的構築困難な1,2-cis-グリコシド結合がある、分岐フラグメントノ構築には、分子内アグリコン転移を応用して高立体選択的に構築することとし、検討を進めた。これまで立体選択性の発現には環状保護基が必須であったが、ナフチルメチル基を介した分子内アグリコン転移の場合、他の非環状保護基を用いた場合でも、立体特異的に反応が進行することがわかった。その応用としてまず、β-マンノシドを有する糖タンパク質糖鎖のコア構造及び、不凍活性糖鎖の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成困難な結合の効率的かつ高立体選択的反応の開発が順調に進んでおり、目的達成に向けて応用できる状態になっている。多分岐構造の構築ストラテジーについても、30糖を超える構造にまで応用できることを確認し、より大きな分子の構築達成に期待が持てる状況になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、より高度に分岐したアラビノガラクタンやアラビノマンナンなどの構造の構築には、より効率的な立体選択的フラグメント縮合法の開発が必要になると予想している。特に、1,2-cis結合におけるフラグメント縮合は合成上有用で、別法としても検討する必要がかると考えている。それにより、工程数短縮による効率の向上も期待できる。
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