研究概要 |
本申請では、「多分岐複合糖質糖鎖化学合成へのアプローチ」を取り上げ、合成化学的に極めて構築困難な糖鎖分岐構造の、収斂的糖鎖構築へ向けた新規方法論を開発し、結核菌細胞壁成分のアラビノガラクタンや、腫瘍の転移や浸潤に関与が示唆される複合型糖タンパク質糖鎖などの構築を目的とする。昨年度までに結核菌由来アラビナン多糖の4分岐31糖全長構造の収斂的合成手法による構築検討、及び改良した分子内アグリコン転移反応を用いβ-マンノシドを有する複合型糖タンパク質糖鎖コア構造などの構築を行ってきた。 本年度は、31糖の800 MHz NMRによる構造解析及び質量分析を行い、既に達成している4分岐22糖構造との比較をおこなった。合成した31糖において、22糖と同様な分岐構造が示唆され、また、鎖状9糖構造の付加が確認できた。また、これまでのオリゴ糖の収斂的な合成ストラテジーを展開し、更に複雑なオリゴマンノシドキャピング構造を有するアラビナン多糖合成を行うために、分子内アグリコン転移反応によるフラグメント縮合を検討した。その結果、本手法により望む1,2-cisグリコシド結合構築可能であることを見いだした。直鎖型の基質については、収率及び立体選択性よく対応する目的化合物を得たが、分岐構造構築への応用については、当初より懸念していた立体障害のため成功せず、今後更に検討する余地が残った。また、改良した分子内アグリコン転移反応は植物由来糖タンパク質のオリゴ糖成分のβ-L-アラビノフラノシド誘導体の合成に応用可能であることも示すことができた。
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