研究課題/領域番号 |
22510244
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
本多 正尚 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60345767)
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研究分担者 |
戸田 守 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (40378534)
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キーワード | 環境保全 / 多様性 / 琉球列島 / 爬虫類 / トカゲモドキ科 / 遺伝子 |
研究概要 |
中部琉球に固有のクロイワトカゲモドキG. kuroiwaeは、現在5亜種が認識され、各亜種の分布は1つから多くて4つの島嶼に限られている。全亜種が環境省と沖縄・鹿児島県から絶滅危惧種の指定を受けるばかりでなく、両県から天然記念物に指定されている。他の多くの種と同様に、本種についても、近年の開発よる生息地の減少、移入生物による生態的撹乱、違法な商取引等によりほとんどの個体群が存続の危機に瀕している。しかし、包括的な個体群の遺伝的多様性の評価およびそれに基づく個体群単位での適切な保全は行われていない。 そこで、昨年度の沖縄島を中心とした組織サンプルの採集に続き、今年度は沖縄諸島の離島の個体群に対する調査を行った。そして、この調査で得られた組織サンプルを用いてミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子約1000塩基対の分析を行った。 その結果、奄美諸島徳之島産オビトカゲモドキG. k. splemdensと残りの沖縄諸島産の亜種に大きく二分岐することが強く示唆された。沖縄諸島産については、亜種のうち複数の個体群からなる基亜種とマダラトカゲモドキG. k. orientalisがそれぞれ単系統にはならず、沖縄島南部産基亜種+伊江島産マダラトカゲモドキ、沖縄島北部産基亜種、渡名喜島産マダラトカゲモドキ、渡嘉敷島産マダラトカゲモドキ、クメトカゲモドキG. k. yamashinae、イヘヤトカゲモドキG. k. toyamaiという進化的に独立な6系列の存在が示唆された。遺伝的多様性については、比較的面積の大きい島嶼内では遺伝的変異が見られたが、渡名喜島のように小さい島嶼内では変異が欠落している場合もあった。これらの結果は、本種の現行の亜種分類を再考する必要性を示唆するばかりでなく、各地域個体群を遺伝的に独自性の高い個体群として保全していくことの重要性をも指摘している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初一番困難が予想された天然記念物に対する現状変更許可(採集許可)の取得、およびそれに基づく野外での組織サンプルの採集が、鹿児島県徳之島を除き、ほぼ完了した。また、マイクロサテライトを分析するために必要なプライマー開発の予備実験を行い、16配列に対してプライマーが設計できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は県指定の天然記念物を対象としているため、まず一番問題となる鹿児島県での採集許可である。申請後、一年を経過しているので、今後も粘り強く調査の必要性を鹿児島県に訴え、早急に許可を得る予定である。鹿児島県の採集が終了すれば、予備実験で得られたプライマー等を利用して全体の分析を完了し、包括的な考察を行う。
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