中部琉球に固有のクロイワトカゲモドキは、現在5亜種が認識され、ほとんどの個体群が存続の危機に瀕している。しかし、包括的な個体群の遺伝的多様性の評価は行われていない。そこで遺伝的多様性を明らかにし、それに基づく個体群単位での適切な保全を行うため、昨年度・一昨年度の調査に加え、今年度は島内に分化の境界が存在すると予想される沖縄本島内で組織検体の追加採集を実施した。得られた組織検体を用いて、まずミトコンドリアDNAの遺伝子数および塩基数を増やして分析を行った。 その結果、奄美諸島徳之島産オビトカゲモドキと残りの沖縄諸島産の4亜種に大きく二分岐することが強く示唆された。この分岐は中新世と推定され、両諸島が海で隔てられるよりも古い時代に両諸島間で遺伝的分化が生じたと考えられた。 沖縄諸島産については、亜種のうち複数の個体群からなる基亜種とマダラトカゲモドキがそれぞれ単系統にはならず、沖縄本島南部産基亜種+伊江島産マダラトカゲモドキ、沖縄本島北部産基亜種、渡名喜島産マダラトカゲモドキ、渡嘉敷島産マダラトカゲモドキ、クメトカゲモドキ(久米島)、イヘヤトカゲモドキ(伊平屋島)という進化的に独立な6系列の存在が強く示唆された。このうち、イヘヤトカゲモドキがまず最初に分化したと推定されたが、残りの関係は不明であった。 そこでさらに詳細に調べるため、マイクロサテライトの開発に当たった。マイクロサテライト候補配列の探索は、磁気ビーズによるMS領域の濃縮と大腸菌を用いたサブクローニングによる塩基配列決定、および磁気ビーズによるMS領域の濃縮と次世代シーケンサーを用いた塩基配列決定にて行った。その結果、100前後の候補配列を得て、そのうち14遺伝子座を開発・解析した。そのうち11座位がジェノタイピング可能となった。
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