生息環境調査:春から秋までの間に、異なる水位条件をもつ2ヶ所の水田用水路で定期的にプランクトンを採集し、種類組成を調べた。水田湛水による水位変動の少ない用水路では31科43属48種が確認され、藍藻類で多雨期に個体数増加が認められたが、甲殻類その他に顕著な変化は認められなかった。一方、水田湛水により著しく水位が増加する用水路では、33科47属53種が確認され、緑藻類、藍藻類、緑虫類のほか甲殻類で、水位増加による著しい個体数増大が認められた。以上の結果は、恒常的な水域よりも一時的な水域において、プランクトンの個体数に水位上昇に伴う顕著な個体数増大が起き易いことを示唆する。 魚類の生殖周期の調査:コイ科魚類7魚種について生殖腺組織を詳細に観察し、文献情報を検索した結果、配偶子形成の型は以下の4つに分けられることが示された。1)秋開始型:10-11月に配偶子形成を開始し、5、6ヶ月間の配偶子形成の後、産卵期を迎える。カマツカ亜科とウグイ亜科の雌雄では多くの種がこの型に属すると考えられた。2)冬開始型:12-1月に配偶子形成を開始し、3、4ヶ月間の配偶子形成の後、産卵期を迎える。タナゴ亜科の雄の多くがこの型に属すると考えられた。3)春開始型:2-3月に配偶子形成を開始し、2、3ヶ月で配偶子形成を終え産卵期を迎える。ダニオ亜科およびタナゴ亜科の雌に共通な型であると考えられた。4)産卵期開始型:4-6月の産卵期の直前から配偶子形成を開始し、産卵期中にも継続して配偶子形成を行う。カマツカの雌のみが該当した。配偶子形成型は亜科レベルである程度共通していたが、種レベルで異なるものもみられた。これらは、各亜科の祖先種が獲得した基本的な型が、種ごとの生息環境、成長・成熟パターン、繁殖期の長さなどの変化に伴い進化した結果であると考えられる。
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