研究概要 |
侵略的外来種アルゼンチンアリは、在来アリをはじめとする多くの在来生物と在来生態系に著しい悪影響を及ぼすと喧伝されているが、アリ以外の生物に及ぼす影響に関してはいまだに不明な点が多い。そこで、本研究ではアルゼンチンアリが在来生態系に及ぼす影響を明らかにする目的で、広島県廿日市市周辺の市街地公園のうちアルゼンチンアリの侵入年度が明らかな公園において粘着板トラップを6, 8、10月に設置し地上歩行性動物を定量的に採集した。まだ同定作業中であるが、オカダンゴムシやコオロギ類各種、多足類、甲虫類などは侵入地であっても多数の個体がアルゼンチンアリとともにトラップで採集された。ニホントカゲの個体数は侵入公園よりも未侵入公園で有意に多かった。一方でニホンカナヘビの個体数は侵入公園と未侵入公園間で差がなく、ハチュウ類にアルゼンチンアリが及ぼす影響の種間差は今後の重要な研究課題であると考えられた。好蟻性昆虫に関しては、アリヅカコオロギを材料に、特定の在来アリにのみ寄生する種と比較するために、多種のアリに寄生可能な種をアルゼンチンアリ人工巣に導入し、行動や生存率を調査した。予測通りスペシャリストはアルゼンチンアリの巣内では共存できなかったが、ジェネラリストは共存可能であった。また、アブラムシをはじめとする半翅目昆虫とアルゼンチンアリの相互作用に関する予備調査、ならびに地上歩行性動物との相互関係に関する予備的観察を実施した。
|