研究課題/領域番号 |
22510247
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
荒谷 邦雄 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (10263138)
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研究分担者 |
細谷 忠嗣 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教 (90467944)
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キーワード | 外来種 / ペット昆虫 / DNAバーコーティング / 生態リスク / 生物多様性保全 / コガネムシ上科 / クワガタムシ科 / トンボ |
研究概要 |
平成23年度は室内での解析と飼育実験と合わせ、国内では南西諸島や伊豆諸島で、また、海外ではベトナムで野外調査と解析用のサンプル採取を実施し、以下のような成果を得た。 まず、アジア産のフタマタクワガタ属に関してDNAバーコーディング解析を実施し、雌雄の対応はもちろん、亜種レベルや産地の特定に有効利用できることを実証したことに加え、ジャワ産のリノケルスフタマタクワガタの雌として販売されていた個体が、実はブケットフタマタクワガタの誤同定であったことや、2009年に福岡市で採集されたセアカフタマタクワガタの雌の産地がスマトラであったことも突き止めた。また、分類学的な貢献として、スマトラ産のコツメクワガタ属やマレー半島産のヒラタクロツヤムシ属の新種を記載したことに加え、雌のみで記載され、これまで雄が知られていなかったボルネオ産のムルハネナシネブトクワガタの雄を初めて記載した。さらに、記載以来、その正体が不明であったスマトラ産のEurytrachelus dorcoidesがラマヒラタクワタの下位同物異名であることも明らかにした。 国内産では、オオクワガタ属の系統解析も実施したほか、福岡市の海岸で拾得された大型の外国産ヒラタクワガタの新鮮な死骸がズマトラオオヒラタクワガタであることを明らかにした。 水生昆虫類に関しては、DNA解析によって、神奈川県で発生していたトンボの不明種が東南アジア産のPseudagion australasiaeであったことを明らかにしたが、これは、水生生物の飼育資材としての水草に随伴して移入されたと考えられる興味深い事例である。 以上の成果の一部は学会誌を含む専門雑誌に論文として掲載されたほか、学会講演でも公表された。また、雑誌「昆虫と自然」における「ペット昆虫の外来種問題」の特集や、ペット甲虫の飼育法に関する著書を通じて外来種問題を社会に啓蒙した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAバーコーディングの解析の過程で、クワガタムシ科において、現在のプライマーセットでは、線虫の1種であるカンセンチュウが増幅されてしまう可能性や、コクワガタなどに偽遺伝子が存在する可能性が高いことなどが明らかとなるなど、解析方法の改良が必要となったため、予想以上の進展には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
水生昆虫のDNAバーコーディング解析のためのサンプル収集の補強に務めることに加え、新たな対象として、三重県で定着・発生している東南アジア産のモモブトハムシに関する調査研究も実施する。サンプルの集中した解析を実施し、その結果と飼育や生態的知見を合わせた総合的なリスク評価や管理の確立をめざす。成果のアウトプットや外来種に関する情報収集のためのwebページの開設にも取りかかりたい。
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